■ミス・ユニバース日本代表、宮本エリアナさんの挑戦

 今年3月、ミス・ユニバース日本代表として選ばれた女性が、例年以上に注目を集めました。長崎県佐世保市出身の、宮本エリアナさん。母が日本人、父がアフリカ系アメリカ人です。前身の大会を含めると60年以上の歴史を持つこのコンテストで、いわゆる「ハーフ」の女性が代表となるのは初めてのことでした。


 宮本さんは日本国籍を持ち、母語も日本語ですが、代表に選ばれた時は「本物の日本人じゃない」「代表にふさわしくない」といった心ない批判も浴びたそうです。肌の色の違いから、地元の学校では「色が移る」と言われて手をつないでもらえず、ゴミを投げつけられるなどのいじめを受けたという宮本さん。あえて表舞台に立つことで「ハーフへの偏見をなくしていきたい」と話しています。

 この「ハーフ」という呼び方、実は日本でしか通じない和製英語だということをご存じですか? 英語の「half(半分)」から来ていますが、英語圏では国籍や人種の異なる両親の間に生まれた人を指す意味では使いません。欧米などでは国際結婚が珍しくなく、すでに人種や民族が複雑に混ざり合っているため、そうした区別をする発想があまりないのです。

 日本ではまだ少数派なので特別扱いされてしまい、好奇の目にさらされたり、差別や偏見に直面したりすることが多いのが現実です。近年はスポーツや芸能の分野で活躍する人が増えたことで、肯定的なイメージや憧れを持つ人も多いようですが、こと「国の代表」を選ぶとなると「日本らしさ」を体現しているかどうかを重視する考えが根強いのかもしれません。

 「ハーフ(半分)」だと「日本人として半人前」と言われているようで嫌だ、と最近では言いかえを提案する声も上がっています。とはいえ、新しい呼び方は当事者の間でもなかなか浸透しない事情があるのだとか。そもそも、国際化が進む時代になってなお、同じ「日本人」の中でさらに呼び分ける必要は本当にあるのでしょうか。

 日本における「ハーフ」の立場について、自身もドイツ人の父と日本人の母を持つコラムニストのサンドラ・ヘフェリンさんにお話をうかがい、差別や偏見、言いかえの動きなどについて2回に分けて考えてみます。

細川 なるみ(ほそかわ・なるみ)

1982年生まれ、豪州などあちこち育ち。大学では比較刑事法専攻だったが、語学好きが高じて校閲記者の道へ。06年入社、東京校閲センター所属。大阪校閲も2年間経験。オフの楽しみは美術館めぐりとテニス観戦、好きなご当地キャラは「ひこにゃん」と「しまねっこ」。