季節は夏に移りました。新社会人の皆さんは新しい生活に慣れたころでしょうか。私たち校閲センターは毎年4月、朝日新聞に入ったばかりの新人記者に向け、「新聞のことばと人権・差別」と題した研修を担当しています。彼らがこれから多くの人に読んでもらう記事を書くうえで気を付けなければいけないことを念頭におき、私たちがふだん校閲作業をする時に意識していること、「偏見・差別意識があると取られても仕方がないのでは」と感じ、紙面化される前に記者に指摘して文言が変わった事例、過去に問題になった差別表現などを紹介しています。

■アンケート、驚きの結果


 今回は、研修前に受講者に対して人権にかかわる表現についてのアンケートを実施しました。新人記者というと、ほとんどが20代の若い人ばかり。彼らが「人権・差別」と聞いてどんなことを考えるのか、聞いてみたいと思ったのです。「これまで世間で話題になった差別表現で、気になったものはありますか」という設問を入れました。あいまいな設問だったので答えにくいかと心配していたのですが、回収したアンケートにはいずれもぎっしりと文字が詰め込まれていました。

 「これまでで気になったもの」として一番多かったのは、2007年の厚生労働相(当時)による「女性は産む機械」発言。全体の3割が書いていました。これには正直言って驚きました。なんといっても8年前の事例。今年の新入社員だと中学生だった人も多いでしょう。それでも多くの人が例に挙げたのは、それだけインパクトがあったからということでしょうか。

梶田 育代(かじた・いくよ)

2001年大阪校閲部入社、鳥取総局、朝日学生新聞社などを経て現在、東京校閲センター。学生の頃はスポーツ新聞部に所属。野球、ハンドボール、バスケットのスコアがつけられる。大阪出身のためお笑いが大好き。東京在住の今でも、年末の「楽屋ニュース」だけは見ないと年が越せない。