(1月30日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 鹿児島県で使われている掛け声の「チェスト」。昨秋、朝鮮半島の言葉が由来ではないかと当欄で触れたところ、「知恵捨てよ」から来ているとラジオで言っていた、というメールを読者からいただきました。

 この説を紹介したのは歴史学者の磯田道史さん。大河ドラマ「西郷(せご)どん」の時代考証もしました。戦場では捨て身で行けという教育がなされ、鹿児島には「議を言うな」(異議を唱えるな)という言い回しも伝わります。「この説は簡単に捨てられない」とする磯田さんは一方で、文献が残っているわけではないと断ります。

 薩摩に伝わる剣術の示現(じげん)流は、唯一の道場が朝日新聞鹿児島総局の向かいにあります。史料館館長によると、計算をした動きを否定する「知恵捨てよ」は、400年前の古文書にある「はたと打つなり」に通じると言います。ただし、けいこでは「エイと言うなり」と書かれた古文書を見せて指導をします。