(12月5日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 「クラフトビール」に、「クラフトジン」。お酒に詳しくない方も耳にしませんか。「クラフト」は、辞書では「手仕事による製作」で、「ペーパークラフト」など工作や手芸の分野で使われましたが、最近では「職人技」に加えて「個性」も感じさせる言葉となっています。

 1994年の酒税法改正をきっかけに各地で「地ビール」が生まれましたが、ほどなくブームは沈静化。その後も研究を続けた醸造所がより高品質なビールを開発し、00年代中ごろから「クラフトビール」と呼ばれて大人気です。地元産の柑橘(かんきつ)類などローカルな素材を生かした個性派が多く、酸っぱさや苦みの強いものなど種類も豊富です。

 ここ数年で増えたクラフトジンも、素材にこだわり、お茶やサンショウなど「和」を前面に、海外進出しているものも。

 大量生産ではないだけに価格は割高です。人気の背景には、おいしさに加えて「どこの誰が、どんな材料でどうやって作ったのか」と「物語」も楽しむ人の増加があります。均質で万人受けする工業製品の大量消費から変わってきているのです。