(11月28日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 大学医学部の入試をめぐり、女子の受験生が一律減点されていた問題が発覚しました。公正であるべき入試をないがしろにする行為について、天声人語は「見えないゲタを男子全員にはかせていた」と書きました。

 「げたを履かせる」は「本来の数量にある数量を加えて、全体の数量を実際より多く見せる」(大辞林)との意味です。

 歯付きで木製のげたは、江戸時代には市井の人々の履物にもなり、「げた」を使った慣用句が使われるようになりました。今は日常あまり履かれなくなりましたが、玄関に置かれている靴入れは「げた箱」と呼ばれ、「げたを預ける」「勝負はげたを履くまで分からない」という表現も普通に使われます。

 比喩に詳しい近畿大学の大田垣仁(さとし)・専任講師(日本語学)によると、慣用句には、短い言葉によって分かりにくい状況をすぐに理解させる効果があることに加え、単なる説明以上のインパクトを与える修辞的な効果もあるといいます。