(10月3日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 「おいしいです」はテレビの食事場面でよく耳にしますし、「危ないですから」は駅のアナウンスで一般的です。でも形容詞に「です」を付けるこのような言い方は日本語として変だとしたら、どうしますか?

 読者の方から、昔は学校で間違いだと教わったのに、当欄でも使われていて驚いたとご指摘を頂きました。

 浅川哲也・首都大学東京教授によると、明治の小説に「形容詞+です」で話す人物が登場しますが、その多くは地方出身者で、東京語からみると方言的な言い方でした。「です」は「だ」の丁寧形なので、「おいしいです」を元の形にすると「おいしいだ」となるからです。東京出身者が使い出すのは明治30年ごろからだと言います。

 こうした経緯もあってか、戦前の国定教科書などで「です」は「でしょう」の場合を除いて形容詞には付かないとされていました。形容詞の丁寧形は、公式には「おいしゅうございます」とするしかなかったのです。