(6月27日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 テニスのウィンブルドン選手権が、英国で7月2日に開幕します。打球は時速200キロを超えることもあり、コートをいっぱいに使ったラインぎりぎりの攻防が繰り広げられます。ここでは、「タカの目」が重要な役割を担います。

 ライン際の正確な判定は人間の目では難しく、その支援のため、4大大会では2006年の全米から導入されたシステムが、タカの目を意味する「ホークアイ」です。テニスの放送で、コート上に着地するボールのグラフィックスをご覧になったことがあるかも知れません。

 システムはソニー傘下の英ホーク・アイ社が開発しました。ソニーによると、コートを囲むように複数のカメラを配置し、多角的に撮られた映像を解析。瞬時にインかアウトか判定します。社名の由来は創設者ポール・ホーキンズ博士の名と、英語で油断のない、隙のないといった意味の「hawk eyed」を掛け合わせたものです。

 獲物に向かって飛び立つタカの鋭い目つきやその探知能力は、国は違っても似た印象で捉えられてきました。野鳥写真家の大橋弘一さんの「日本野鳥歳時記」によると、定説はないものの「タカ」は、高く飛ぶ「高」、猛禽(もうきん)を意味する「猛(たけ)」、その素早さから「疾(と)く」、高貴なものとして「貴」などが語源ともあります。