(6月13日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

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 まもなく開幕するサッカーワールドカップ(W杯)。関連記事では日本や世界の強豪の「戦術」が話題に上ります。

 選手の配置や攻守の策を指し、監督の個性が表れますが、1990年代初頭までサッカーの記事にあまり登場しない言葉でした。全国紙で「サッカー」と「戦術」を含む記事を調べると、「ドーハの悲劇」の93年ごろから増えています。W杯日韓大会が開かれた02年に年間約1千本と93年の約6倍になり、すっかり定着しました。

 「戦術」はもともと軍事用語です。「軍隊を配列する術」「某時期、某局面における計画と実施」(防衛用語辞典)を表します。「人海戦術」のように「ある目的を達成するために取る手段、方法」(日本国語大辞典)へと意味が広がりました。

 戦術と似た言葉に「戦略」があります。個々の戦闘を考える戦術に対し、戦略は戦争全体の計画や運用を言い、時間的な範囲や規模が大きくなります。

 戦略も、目的達成のため「大局的に事を運ぶ方策」(日本国語大辞典)へと広がりました。

 政治や行政では、加計学園の獣医学部新設問題で「国家戦略特区」が注目されました。これは安倍政権の成長戦略に位置づけられています。