(8月30日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 面接官、試験官、教官。こうした表現に対し、「役人以外に『官』を使うのは不適切」という声があります。官房長官、事務次官、裁判官など、「官」がつく言葉は確かに公的機関の仕事がほとんどです。

 国語辞典編纂者(へんさんしゃ)の飯間浩明さんは「基本的には役人を指しますが、使用実態は単純でなく、判断の難しい言葉の一つです」と話します。実際、多くの国語辞典で語釈が変遷しています。
 例えば「教官」の項目。広辞苑は初版(1955年)で「①学術を教授する官吏②教育に関することをつかさどる官吏」と、役人を指す二つの語釈を挙げました。ところが第4版(91年)になると「俗に、私立大学や専門学校などの教員にも用いる」という表現が加わります。

 「官」の字にはどんな来歴があるのでしょう。漢字研究の第一人者・故白川静さんは「常用字解」で、軍の駐屯地を表したと説明します。ウ冠は屋根、その下に軍隊が守護霊として携帯する肉を安置した形。後に「役所・役人」や「つかさどる」の意味になったとしています。