(7月12日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 「こちら、コーヒーになります」。飲食店で注文品を持って来た店員から、こんなふうに言われたことはありませんか?

 当欄には、「目の前に置かれた物がこれからコーヒーに変わるようだ」といった違和感を訴える読者の声が多く届きます。

 辞書を見ると、三省堂国語辞典は動詞「なる」の「あたる。相当する」の意味の使用例に「コーヒーになります」を挙げています。一方、岩波国語辞典は「1980年ごろから広まった俗用」とし、明鏡国語辞典は「きつねうどんを注文した客にきつねうどんを出すような、他の可能性が考えにくい場合には不自然になる」と説明します。

 岐阜大学の洞澤伸(ほらさわ・しん)教授(言語学)はこうした言い回しを「バイト敬語」と呼びます。「コンビニ敬語」「ファミレス敬語」とも言われますが、主にアルバイトの若者たちが接客業全般で使っているからだそうです。

 「です」と断定するのは強すぎ、「ございます」だとかしこまりすぎと感じるのでその間を狙っている、と分析します。