前回の拙稿で正月気分がまだ抜けていないことを申し上げたが、それどころか、録画していた年末の紅白を今ごろ改めて見ていると、ますます時間の感覚がおかしくなる。例年いろいろ言われるNHK紅白歌合戦だが、これだけライフスタイルが多様化した時代に40%台の視聴率を出せるのはやはりすごいと思う。関係者は素直に喜んでいいのではないだろうか。今回はラストに「一票の格差」についても問題提起してくれた(笑)。

 その紅白だが、ダンスものに関心がある筆者は演出に目が行った。「恋ダンス」が話題になったが、むしろRADIO FISHのキレキレのダンスや土屋太鳳さんの優雅な踊りが印象に残った。

映画「チア☆ダン」今春公開 チアダンスで全米制覇

 さて、今春「チア☆ダン」(配給:東宝)という映画が公開される。2009年、県立福井商業高校チアリーダー部「JETS」が結成3年で全米チアダンス選手権に初出場し、優勝するまでの実話をもとに描いたものだ。

 昨年11月19日と20日の両日、日本チアダンス協会(JCDA)主催の「全日本チアダンス選手権大会」が東京体育館で行われ、20日、サプライズで「チア☆ダン」の主要キャストが登場、子どもたちと一緒にダンスを踊った。

 登場したのは主演の広瀬すずさんと、共演の中条あやみさん、山崎紘菜さん、富田望生さん、福原遥さん。

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子どもたちとダンスを披露する(左から)中条あやみさん、広瀬すずさん、山崎紘菜さん=2016年11月20日、東京都渋谷区の東京体育館、いずれも平井一生撮影

 「サプライズ」という言葉も面白いもので、元来はいうまでもなく「驚き」ではあるが、最近はもっぱらイベント等で意表をつきオーディエンスを喜ばせることの意味で使われることが多い。
サプライズタイムMCを務める杉山真也TBSアナウンサーが登場した時点で歓声が上がったが、主演の広瀬すずさんらが現れたときの歓声もすさまじいものがあった。さらに、杉山アナから、「広瀬さん、今日は踊りますか?」との問いに対し、「踊っちゃいましょう」という返答があると、「キャー!!」という大歓声に。「歓声」という言葉は表現に便利だ。

 観客や選手みんなで踊りましょうということになり、「チア☆ダン」のダンス指導を担当したJCDAインストラクターの三田村真帆さんのレクチャーがあり、ダンスが始まった。三田村さんは映画のモデルとなった「JETS」OGでもある。

 今回の拙稿のメインカットの一つとなるので、かなり気合を入れて撮りながらも、周囲の状況を確認すべく会場を見渡すと、各々の選手は皆、ちゃんと動きがそろっている。「たいしたものだ」と感心する。

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ダンス終了後、笑顔を見せる広瀬さんと山崎さん。感想を聞かれた広瀬さんは、「こんなに大勢で踊ることってなかったから、とても楽しかったです」=2016年11月20日、東京体育館

 広瀬さんは「映画でチアダンスを演じ、華やかで魅力あふれる、この競技が大好きになりました。最初はバラバラなメンバーが1人ずつ夢に向かって努力していくことで一つになっていく姿を映画では描いていて、ふだん頑張っている選手たちの心に刺さると思います。幅広い世代の人たちに楽しんでもらえると思います」と語った。「心に刺さる」。いい表現だ。

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ダンス終了後、報道陣のフォトセッションに臨む(左から)富田望生さん、中条あやみさん、広瀬すずさん、山崎紘菜さん、福原遥さんと子どもたち=2016年11月20日、東京体育館

モデルは福井商業高チアリーダー部「JETS」

 記事を見ていただきたいが、これは8年前、全米チアダンス選手権で「JETS」が初出場で総合優勝を果たしたときのものだ。選手たちがとてもいい表情をしている。現地でこの貴重な写真を撮ったのはJCDA事務局の山本緑さん。その瞬間に立ち会った感想をうかがった。

 「成田空港でお会いした福井商業高校チアリーダー部JETSの皆さんの初めの印象は『普通の高校生』。初めてのアメリカにとても嬉しそうで、わくわくしていて、可愛らしいなあと思いました」と山本さん。

 映画のチラシでは「ごくごくフツーの女の子が」となっている。実際もやはりそうなのか。これはその場で見た人間にしかわからない。うらやましいことだ。