(9月7日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)


 「六日の菖蒲(あやめ)、十日の菊」という言葉があります。前半は菖蒲が5月5日の端午の節句のものであることから、6日には時期遅れになるという意味です。では菊は何月9日の花でしょう? 正解は9月。あさって9月9日は重陽(ちょうよう)、菊の節句です。

 重陽はあまり一般的でなく、私も大人になってから知った節句ですが、江戸時代初期に幕府が定めた「五節句」に、端午と共に含まれます。他の三つは七草の1月7日「人日(じんじつ)」、ひな祭りの3月3日「上巳(じょうし)」、たなばたの7月7日「七夕(しちせき)」で、日付はおなじみでしょう。

 重陽は、陰陽思想でめでたいとされる陽数(奇数)が、月と日で重なることが名の由来です。奇数の重複は他の五節句も同様で、上巳、端午を「重三(ちょうさん)、重五(ちょうご)」と呼んだりしますが、1桁で最大の「極まった」陽数9が重なる日を重陽と呼びます。