バトントワリング世界大会で「金」

 福岡勤務時代のことだが、西部本社発行の夕刊社会面に「偏西風」というコラムがあった。1990年の5月21日付から始まり、2008年の9月30日付で終了した。各部のデスク、総局長、編集委員や論説委員らが輪番で執筆した。題材は自由で、みな思い思いのことを自由に書いたが、それが好評だったのか、18年にわたるロングランコーナーとなった。筆者はデスク時代の06年から08年の間に15回出稿した。

 その拙稿のなかに「∞の2分間」というものがある。バトントワリングの世界大会に向けて、バタントワラーのそれぞれの思いをつづったものだ。当時まだ大学生だった中村麻美さんはバトンの演技を「短距離の全力疾走」と表現した。その年のカナダで開催された世界大会では残念ながら銅メダルだったが、翌年の全力疾走の結果、見事、アイルランドで念願の金メダルに輝いている。

 バトントワリングという言葉自体に関しては3年前の小欄(「舞うバトン 夏の大舞台、間近」)で述べたので詳細は省くが、「パレードの先頭でなにか棒みたいなものを、くるくる回しているよね」というのが一般の感覚ではないだろうか。ほとんどの方は、大規模なイベント等で目にしているかと思われる。パレードの華ではあるが、それゆえ華以上の見方はしていないだろう。ところで、あの「くるくる回している棒」を実際に持ってみて、くるくる回したことのある方はどのくらいいるだろうか。さらに「くるくる回す」ことが「バトントワリング」という一つのスポーツ競技種目となっており、世界大会まで行われることをご存じの方は。

 1月末、福岡在住の中村さんから「毎日寒いですがいかがお過ごしでしょうか。東京にて公演に出演させて頂くことになりました。観に来て頂けると嬉しいです」という手紙をいただいた。4月にバトントワリングを主とした舞台をやるという。

「ここから」夢舞台へ出発

写真・図版

中村麻美さん。「今回は小さな会場で観客との距離が近く、同じ空気を感じ、バトンの楽しさや素晴らしさを伝えられる場だと思いました」=2016年4月17日、東京都荒川区東日暮里6丁目の「d-倉庫」、いずれも平井一生撮影

 タイトルは「ここから…Ⅰ」。出演者をみるとトップクラスのバトン選手・指導者が名を連ねている。企画・主催は「夢現人」(古谷野千代子・綿貫真由美)となっている。お二人ともバトン指導の第一人者だ。「舞台でバトンか、面白そうだな」と思い、公演当日、今回の企画について話をうかがった。