患者は、若い世代なのでしょうか? 寝間着を着せられては「きもい」、血圧を測るバンドを巻かれては「きもい」――愛知県と岐阜県の病院で、着心地や気分を聞かれた患者が、それぞれ返答しました。場所も状況も異なる患者2人が、期せずしてまったく同じことばを口にしました。

 着替えを手伝った看護師は「いまどきのことばを使うおばあさんだなあ」と思い、血圧を測ろうとした検査技師は「どこが気持ち悪いの?」と慌てて尋ねたと言います。世代的には年配の患者がときおり、「きもい」と口にするそうです。

 両病院のスタッフとも「気持ち悪い」という若者ことばそのものと受け止めたようです。しかし、若者ことばをしゃれて使おうとしても、相手の動作を受けて自分の感情や感覚を、とっさに表現するとは考えにくいものです。思わず口に出したとすれば、胸中深くなじんだものと考えるのが自然かもしれません。それは、地域の暮らしに息づくことばの可能性が高そうです。

 方言を収録した辞典などを繰ると……「きもい」がありました。「せまく窮屈である」という意味や、「オビガ キモェー」(帯がきつい)という使い方の例をあげています。患者の一人は「寝間着が窮屈だ」と、もう一人は「血圧を測るバンドの締め付けがきつい」と伝えたのが分かります。

 昨年3月の「近畿お国ことば編『その意味は何?』」に続き、今回は東海地方の病院スタッフと患者とのやりとりに加え、患者同士や病院スタッフの家族周辺が交わすお国ことばも紹介しましょう。共通語だけで意味を考えると、どうも妙な具合になるようです。