鉄道車両の愛称

 前回はJR最後の定期夜行急行列車「はまなす」についてお読みいただいた。自分の書いた原稿を読み返してみると、我ながら物好きだと、しみじみ思う。鉄道というものは実用のためのもので、本来は興味の対象物ではないのだろうが、現在では、立派に趣味の一分野として、その地位を確立している。以前は極めてコアな一部のいわゆる「マニア」の世界だったが、近年の新幹線検査車両「ドクターイエロー」の人気ぶりや、「はまなす」亡き後、最後の定期夜行列車となる「サンライズ出雲・瀬戸」が女子会の場所になっているという記事等を見聞きすると、時代の移り変わりを感じる。

 「ドクターイエロー」もそうだが、興味を持たれるゆえか、一部の鉄道車両には愛称がついている。例えば「デゴイチ」という言葉は鉄道に関心がない方でもご存じだろう。D51形蒸気機関車のことだが、蒸気機関車の代名詞的な愛称でもある。

 「ムーミン」。EF55形電気機関車。車体の正面が下ぶくれの顔のように見えるため、こう呼ばれた。デゴイチが1000両を超えるほど大量生産されたのに対し、ムーミンはたった3両。うち2両は解体されたが、1両が埼玉・大宮の鉄道博物館に現存する。