(10月21日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 Yamada TaroかTaro Yamadaか――。英語で自己紹介をするとき、どちらを選びますか。

 中学校では、2002年度からすべての教科書で「姓―名」中心の表記になりました。注釈で「名―姓」の表記に触れる教科書もありますが、いまの中学生は基本的にYamada Taroと習っています。

 文部省が最初に英語の教科書をつくった1889年、日本人の名前は「姓―名」の順で表記されていました。和歌山大学の江利川春雄教授の調査によれば、教材の中に「名―姓」の表記が現れ始めたのは1904年ごろ。その後、徐々に主流となったようです。

 この表記を見直す教科書が増えたのは、90年代のことです。江利川教授は、その背景に「90年代~2000年代の、民族それぞれの文化を尊重する世界的な流れがある」といいます。国連総会では92年、「少数者の権利宣言」が採択されます。00年には、国語審議会が「日本人の姓名については、ローマ字表記においても『姓―名』の順とすることが望ましい」との答申を出しました。