(6月10日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 梅雨入りした関東地方では、アジサイが見頃を迎えています。あじさい寺として有名な神奈川県鎌倉市の明月院(めいげついん)を訪ねると、日本古来種のヒメアジサイ2500株が参道の両脇を青一色に染め、多くの観光客の目を楽しませていました。

 季節を代表するこの植物の名は、一説に「あつ(集)さ(真)あい(藍)」が語源とされ、藍色(の花)が集まる様子を指すといいます。

 漢字では「紫陽花」の表記がおなじみです。中国・唐の詩人、白居易が「色は紫で香りがよい」花に出合って紫陽花と名付けた、という漢詩に由来します。ただ日本原産のアジサイは香りに乏しく、当時の中国に咲いていたとも考えにくいことから、彼の詠んだ花は別物では、と言われています。

 今でこそ不動の人気ですが、白から赤や青へと次第に色を変える特徴から「七変化」とも呼ばれ、これが人の心変わりに通じるとして、実は「冷遇」されてきた過去があります。