(ことばの広場+)

 朝日新聞は昨年11月に外来語の書き方を一部見直し、たとえば原音で「ウィ」と発音される言葉は文字でも「ウイ」でなく「ウィ」と書くようにしました。この改定へのご意見やご感想が約50件寄せられました。英語の早期教育の必要性が議論される中、外来語への関心の高さを改めて感じました。

 読者の皆さんが漢語以外の外来語をカタカナで書き表すとき、どのような点を最も重視されるでしょうか。その表記が外国語の原音にどれだけ近いかでしょうか。あるいは、見た目になじみを感じるかどうかでしょうか。

 いただいたご意見には、「『ヴァイオリン』など、外来語表記は今後も原音に近づけてほしい」という声の一方、「原音通りに書くのはどのみち不可能だ」「原音に忠実なカタカナ表記が可能だという思い込みが素直な外国語学習を妨げる」といったものもありました。

原音通りの表記は可能か

 「外来語」とは、外国語を同義もしくは近い意味の日本語に翻訳せず、日本語母語話者が耳で聞いた音に従ってそのまま取り入れたものです。ただし、日本語に取り入れられた時点で、外来語もすでに日本語であり、外国語ではありません(注1)。

 日本語の音はそもそも外国語の音と体系を異にするので、日本語の音や文字で発音・表記すると、過度に強調されたり捨象されたりする部分がどうしても出てしまいます。

 第一に、日本語は、他の多くの外国語と音節のとらえ方が違っています。

 日本語は、母音(共通語はa,i,ɯ,e,oの五つ)のみか、子音+母音のセットで発音・表記するのが基本です(拗音=ようおん=や一部の方言など例外もあります)。この単位を「音節」と呼びます。音節は、大体かな文字1字に対応します。英語の“strike”(英語では1音節)を日本語母語話者が外来語として取り入れる際には、「ストライク」(sɯ+to+ra+i+kɯ)というふうに、5文字に分けて発音・表記することになります。