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2012年12月17日11時19分

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〈新ポリティカにっぽん〉民主「最強の57人」に重責

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早野透(はやの・とおる) 1945年生まれ、神奈川県出身。68年に朝日新聞に入社し、74年に政治部。編集委員、コラムニストを務め、自民党政権を中心に歴代政権を取材。2005年4月から「ニッポン人脈記」連載を率いた。10年3月に退社し、同年4月から桜美林大学教授。近著に「田中角栄 戦後日本の悲しき自画像」=安冨良弘撮影

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拍手で迎えられる自民党の安倍晋三総裁=16日夜、林敏行撮影

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■早野透(桜美林大教授、元朝日新聞コラムニスト)

 総選挙の結果が出た。民主党政権はあえなく退場して、自民党・公明党政権の再登場である。それにしても、「こちらがだめならあちら」という小選挙区は、劇的な浮沈をもたらすものである。3年4カ月、せっかくの晴れ舞台を生かせなかった民主党は、もって瞑(めい)すべし、というほかない。

 大阪10区。自民党から日本維新の会に移った松浪健太氏とデッドヒートで敗れ、比例復活した辻元清美氏。「叫べども叫べども、どうしても声が届かないのよ。民主党といっても有権者はフンという感じで」。吹き荒れた「維新暴風」のなか、大阪の民主党でたった1人生き残ったのは、「清美ファン」の個人票によるものだった。

 開票の夜のテレビチャンネルを回せば、同じく民主党の長島昭久氏が「いくら説明しても聞く耳を持たない、言い訳なんか聞きたくないという感じで」と語っていた。それでも東京21区で当選したのは、防衛問題で一家言ある個人の力量が救ったのだろう。

 有権者にとって、どの政党に投票するか、どの候補者を選ぶかの基準は、ひとつは実績評価、もうひとつは政策ビジョンである。とりわけ与党は、政権を持っていた間にどれだけのことをしたのか、しなかったのか、実績評価にさらされることになる。

 思い返せば、3年4カ月前、自民党の安倍、福田、麻生の3代の政権崩壊の体たらくに「いっぺん民主党に」ということで政権交代が実現した。やらせてみたらこちらは未熟この上なし、マニフェストで約束した子ども手当はどこへやら、約束していない消費税を増税するとあっては、いくら政策合理性を訴えても大衆は聞く耳を持たない。おかげでこんどの選挙で、民主党のあぶくのような「その他大勢」が削(そ)ぎ落とされて、「最強の57人」で再出発するのは、それはそれでいいことかもしれない。

■コトを荒立てたくない安倍氏

 新潟5区で、自民党の長島忠美氏が民主党の田中真紀子氏を破って当選した。かつてこの地域に絶大な城を築いた田中角栄の命日でもある12月16日に、角栄の娘が議席を失ってしまった。

 実は、角栄を支えた「越山会」の人々の半分ほどは、真紀子氏と肌合いが合わずに長島陣営に乗り換えている。加えて、安倍晋三自民党総裁が「景気が一番」という政策ビジョンを打ち出した。「金融緩和と公共事業で仕事が来るだろうと建設会社が胸を膨らませているんですよ」というのは、地元の事情通氏の話である。

 この自民党大勝利は、民主党はもうイヤ、しかし第三極はまだ託するに足らず、この際やむなしという消去法的選択であったことは、自民党の幹部がそろいもそろって認めるところである。だから、新潟5区の事情通氏はこう言うのである。「もし自民党政権が景気浮揚に失敗すれば、なーんだということになってまた自民党離れを起こしますよ」

 自民・公明政権は、これからどう動くか。ねじれの参院が否決したって衆院で再議決できる3分の2の議席を握ったのだから、イケイケどんどんとなるかといえばそうではあるまい、まもなく首相になる安倍晋三自民党総裁は、外交内政きわめて慎重精妙にコトを運ぶはずである。1度目の安倍政権がたった1年で挫折した経験もある。参院選まであと半年である。ここで乱暴して参院で過半数を取り損なったりすれば、今回の衆院選勝利も実はなにほどのものでもない。

 安倍氏のライフワークは、憲法改正である。憲法改正には衆参両院で3分の2の賛成が発議要件である。まず参院選で勝つこと、それから連立を組む公明党はどうやら積極的ではないから、「醜い憲法」と言い募る石原慎太郎代表の日本維新の会と組む必要もあるかもしれない。そのことを思えば、原発問題も日中関係もとりあえずはコトを荒立てずに先送りするにしくはない。

 今回の選挙の最大の特徴は、タカ派の跳梁(ちょうりょう)とハト派の衰退である。老舗のハト派勢力、共産党と社民党はまたしても後退した。新興ハト派とも目される日本未来の党も伸び悩んだ。自民党の加藤紘一氏のようなハト派の大物も落選した。民主党の菅直人氏は辛うじて比例復活で滑り込んだ。

 そうなると、政界全体を見渡せば、民主党の「最強の57人」がどう動くかが焦点になる。このなかにも潜在的タカ派が少なからずいるようである。であれば、社民党脱藩のハンディ、民主党逆風を生き残った辻元清美氏にはハト派リベラル勢力の結集軸として、女坂本龍馬のごとく走り回ってもらわねばなるまい。

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