日本原子力発電敦賀原発(福井県)が廃炉になる公算が大きくなり、衆院選で「脱原発」を訴える政党は活気づいた。苦戦を強いられているだけに、反転攻勢に向けてアピールに躍起だ。一方、政権に返り咲くと判断を迫られる自民党は沈黙している。
「今日は歴史的な転換点の日。活断層なので再稼働すべきではないという判断を規制委員会の委員長自身がした。まさに原発ゼロに向かって歩み出した。この流れを止めてはならない」
民主党の細野豪志政調会長は10日、福島市での演説でこう強調し、脱原発を掲げる党への支持を訴えた。
6月の関西電力大飯原発(福井県)の再稼働の判断には細野氏も加わり、野田政権が決めた。この日、野田佳彦首相がコメントする機会はなかった。ただ、民主党内では選挙戦にプラスに働くとの期待が広がる。
菅直人前首相は「早く廃炉手続きに入るべきだ。こういう形での廃炉は初めて。国民に理解していただければ、大変大きな意味を感じてもらえる」と勢いづく。閣僚経験者は「民主党の主張が再稼働ありきではないことが証明された。もっと原発問題を訴えていけばいい」と歓迎。別の中堅は「ちゃんと原子力規制委員会が機能している証拠。自民党は3年以内に再稼働するかどうかを判断するとしているが、それでは遅い」と誇った。
報道機関の序盤情勢調査では、民主党や日本未来の党など「脱原発」を公約に掲げる党の苦戦が目立つ。超党派の「原発ゼロの会」や脱原発基本法案の賛同者に名を連ねた前議員で、朝日新聞の調査で優勢だったのは1割程度にとどまる。
再稼働反対を掲げる未来の嘉田由紀子代表は10日、名古屋市で記者団に「委員全員が活断層だと言っている以上、即時廃炉を求めていくしかない」と強調。「既成の大政党が本気で(原発を)やめる気がない。実践的な提案を出したという意味で未来の党しかない」と訴え、巻き返しを図る。
日本維新の会は選挙公約とともに発表した政策実例で「既設の原子炉による原発は2030年代までにフェードアウト(消えていく)」と記したが、脱原発を強調する勢力とは一線を画してきた。それでも所属議員の一人は「電力側が安全を証明しない限り、原発は止めないといけない」と語る。公明党の山口那津男代表も10日、取材に「専門的な判断は尊重しなければならない」と語った。
一方、自民党は公約で「原発の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねる」とし、再稼働の可否は「3年以内の結論を目指す」と先送り。「脱原発」の世論が逆風となる展開にはなっておらず、このまま封印しておきたいのが本音。再稼働に関しても主張は鮮明にしていない。政権に戻ればさっそく判断が問われることになるが、幹部の一人は「今も止まっている原発の再稼働は難しいと言っても仕方ない」と言葉を濁した。
衆院議員選挙公示 | 12/4(火) |
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