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(公約を問う)14:温暖化対策 京都議定書後足踏み 原発頼みの削減に限界

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地球温暖化対策に関する各党の主張

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ろうそくに火をともすキャンドルナイトの参加者たち=7日、埼玉県川口市

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地球温暖化対策をめぐる国内外の動きなど

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文化くらし報道部・小林哲記者

 日本の地球温暖化対策はいま、大きな節目を迎えている。京都議定書の温室効果ガス削減義務は4月以降は負わなくなった。これに代わる目標を秋にも国際社会に示さなければならないが、2年前の東京電力福島第一原発の事故後、新たな道は見いだせていない。

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 夕暮れの公園に、ろうそくの炎がともる。七夕の7日、埼玉県川口市で、電気を消して過ごす「キャンドルナイト」が開かれた。

 5年前のこの日、北海道の洞爺湖で開かれたサミットで先進国首脳が地球温暖化対策の強化に合意したことを受けて各地に広まった催しで、850人が参加した。

 キャンドルナイトと言えば、夏至と冬至の夜に全国でおこなわれる「100万人のキャンドルナイト」が有名で、2003年から続く。東京タワー前で催してきた「大地を守る会」によると、今年6月の集会には過去最高の5500人が集まった。広報担当の栗本遼さん(28)は「東日本大震災後に、節電や環境問題への意識が高まったことが影響している。若い世代ほど関心は強い」と話す。

 しかし、政治の動きは鈍い。ここ数年、日本では温暖化対策は国政の主要テーマから遠ざかっている。

 各国の代表が京都に集まり、歴史的な京都議定書を採択したのは1997年。ところが3年前の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)で日本は、米中両国などが削減義務を負わない京都議定書の枠組みは「不公平だ」として、日本も自らの義務を延長しない考えを表明。途上国などから「KYOTOを殺すな」と非難を浴びた。

 日本は自主目標を掲げて対策を続ける方針を表明してきたが、福島第一原発の事故後、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発が止まると目標設定が困難になった。新しい目標はいまだに示せていない。

■11月に国連会議 迫られる新目標

 足踏みする日本とは対照的に、国際社会の動きは加速している。京都議定書に続き、先進国から途上国まですべての国が参加する新体制に15年に合意し、20年からスタートさせるための交渉が本格化してきた。

 6月、オバマ米大統領は火力発電所にCO2の排出基準を設け、再生可能エネルギーを20年までに倍増させる行動計画を公表し、中国などの新興国とも協力して「ポスト京都」に向けた交渉を前に進める決意を明らかにした。

 欧州連合は20年よりさらに先の30年の削減目標の検討を進めている。

 6年前、当時の安倍晋三首相は国際会議で「温暖化対策に最大限の取り組みをおこなっていく決意だ。各国が私の招待にこたえ、2050年の『美しい星』に向かって共に歩んでいくことを望む」と述べた。この発言後にドイツで開かれたG8サミットでは「50年に世界の温室効果ガスを半減する」ことを提案し、支持を獲得した。

 昨年末の再登板以降、安倍首相は新たな数値目標については語っていない。

 しかし11月にはポーランドでCOP19が開かれる。日本は自らの温暖化対策をどう立て直し、「ポスト京都」の新体制に向かう国際社会でどのように振る舞うのかを、具体的に示さなければならない。

 再稼働がままならない原発の代わりにCO2の排出量が多い石炭火力発電所の新増設を検討するエネルギー政策と、温暖化対策の折り合いをどうつけるのか。原発頼みではない削減策を打ち出せるのか。政権の構想力と実行力が問われることになる。

■自公「50年に80%削減」/民主、数値触れず/みんな・共産「20年に25%」維持

 温暖化対策の最大の焦点は、09年に鳩山由紀夫首相が掲げた「20年に温室効果ガスを90年比で25%削減する」という目標の扱いだ。これは原発の9基新増設を前提にしており、福島第一原発事故で見通しが立たなくなったからだ。

 参院選での各党の主張は大まかに4グループに分類できる。(1)「25%削減」の維持または強化(2)「50年時点で80%削減」という国際目標の維持(3)数値目標に触れず(4)温暖化対策に直接触れず、という具合だ。

 自民、公明は(2)で足並みをそろえた。09年に先進国が合意した「50年までに80%削減」(自民は05年比、公明は90年比)を掲げつつ、原発の再稼働状況に大きく影響される20年時点の目標への言及は避けた。

 自民は「実現可能な最大限の削減目標」を、11月のCOP19までに作ると訴えている。公明は3年前の参院選で「20年に25%以上削減」を掲げていたが、今回は軌道修正した。

 民主は09年の総選挙では五つの重点項目の一つに温暖化対策を位置づけたが、今回は記述自体が大幅に減り、「国際社会に通用する新たな中長期数値目標の設定」との表現にとどめた。「与党時代の公約をゼロベースで見直した上で数値は掲げないことにした」(党本部)という。

 みどりも数値は掲げず、「気候変動枠組み条約の目標の着実な達成」とした。「25%削減は堅持すべきだが短期的には火力発電増強が必要で、達成時期の先延ばしもある」としている。

 20年の数値目標を示したのは、みんな、共産、社民の3党。みんな、共産は25%削減の維持、社民はより高い「30%」を掲げた。3党とも再生可能エネルギー導入拡大や省エネ強化により、脱原発とCO2削減の両立を目指すとしている。

 公約で温暖化対策に直接触れなかったのは維新、生活、大地の3党。維新は「脱原発の流れの中で再生可能エネルギーの活用に力を入れていく」、生活は「CO2削減と温暖化の関係について懐疑的な議論もあり、今回は触れなかった」と説明している。

 各党の主張について、専門家の見方は分かれる。

 21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹は「再生エネ導入やCO2排出の規制強化を進めれば、電気料金はさらに上がる。20年に25%以上削減するという公約は絵に描いた餅と言わざるをえない」と言う。これに対し世界自然保護基金(WWF)ジャパンの山岸尚之グループリーダーは「東日本大震災後、東京都では10%以上の節電に成功し、再生エネのコスト低減も予想を上回っている。できることはまだまだある」と話している。

     ◇

 〈視点〉将来に影響大 向き合う時だ

 【文化くらし報道部・小林哲記者】日本の温暖化対策は、原発利用と表裏一体で進められてきた。「25%削減」は原発抜きには語れず、原発事故であっけなく行き詰まった。そうして始まった目標の見直しも、再稼働の動向に配慮して議論が進んでいない。

 原発事故から2年余りがたち、そろそろ政治が責任を持って新たな道筋を示すべき時期に来ていると思う。参院選はその絶好の機会だが、各党の訴えから意気込みは伝わってこない。

 経済政策や社会福祉、憲法、隣国との外交などはいずれも重要なテーマだが、将来の国民生活に与える影響の大きさでは温暖化問題も引けを取らない。気候変動など、見過ごされがちな危険(リスク)にも正面から向き合う政治に期待したい。

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