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普天間公約、自民に亀裂

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住宅地に極度に近接しているため、「世界一危険な飛行場」と称される米軍普天間飛行場のゲート付近。オスプレイ配備などに抗議する赤いリボンやテープが基地の金網フェンスに張りつけられていた=4日、沖縄県宜野湾市、上田幸一撮影

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米軍嘉手納基地。手前は、基地の敷地内ながら米軍が野菜づくりなどを黙認している「黙認耕作地」=4日、沖縄県嘉手納町、上田幸一撮影

 【奥村智司、石松恒】沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり、自民党は参院選公約で名護市辺野古への移設を明記した。ところが沖縄選挙区で戦う自民党は候補者も県連も「県外移設」の立場をとる。共闘する野党はこれを「二枚舌」と批判している。

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■「県外移設」のビラ配らぬまま

 地域政党である沖縄社会大衆党の委員長を務める糸数慶子氏は10日、石垣島を回り、こう訴えた。

 「何としても沖縄から平和の1議席を勝ち取らせていただきたい。平和憲法を変えるという安倍政権にノーの声を上げる1議席だ」

 沖縄県庁前では9日、糸数氏と並んだ共産党の志位和夫委員長が「沖縄の自民党候補は県外移設と言い、自民党の選挙公約には辺野古移設とはっきり書いてある。このような二股公約を絶対に許すわけにはいかない」と声を張り上げた。

 共産党は全国の選挙区で唯一、公認候補を立てずに糸数氏を推薦。生活、社民両党やみどりの風も足並みをそろえる。民主党は自主投票としたが、海江田万里代表は6月23日、那覇市の党会合で「糸数さんを応援する」と表明。「残念ながら民主党全体では県外移設と言うわけにはいかないが、沖縄県民の声に耳を傾けて寄り添う」と語った。

 改選数1の選挙区では野党が分裂して自民党が優位に立つが、沖縄では状況が異なる。昨年末に発足した安倍政権は3月、仲井真弘多(ひろかず)知事に辺野古の埋め立てを申請。4月には「主権回復の日」の式典を政府主催で開き、沖縄県民の感情を逆なでした。参院の会派に属さず「革新無所属」で活動した糸数氏は、野党が共闘するのに格好の候補者となった。陣営幹部は「ことごとく沖縄を差別的な状態へと追い込んでいく政権への怒りの蓄積が共闘の土台となった」と説明する。

 来年は1月に名護市長選、終盤には知事選が予定され、糸数陣営は「参院選が前哨戦」と位置づける。辺野古移設反対を明言する稲嶺進・名護市長も糸数氏の支援に駆けつけ、「辺野古の基地建設を強硬に進めてこないように、糸数氏の議席を守らなければいけない」と強調した。

■野党「二枚舌」と批判、共闘攻勢

 日米合意に基づく普天間返還の実現に向け、自民党としても負けられない。辺野古の埋め立て申請の承認をめぐる知事の判断が年内にも迫るからだ。

 10日、那覇市の集会。県外移設を探った鳩山政権を総裁時代に「アマチュア外交」と批判した谷垣禎一法相が「沖縄の振興も安定した政権をつくることで解決していく」と訴えた。山本一太沖縄相も5日、名護市で「安倍内閣の沖縄振興に対する情熱、熱意はわかって」と懇願。振興を前面に基地問題には触れない。

 自民党の安里政晃氏の選対本部長には辺野古移設のカギを握る仲井真知事が就いた。初当選時は自民党が推薦し、かつては県内移設を容認した仲井真氏も今は「県外」を主張。来年12月までの知事在任中に埋め立て申請の承認を得たいが、振興策の効果は未知数だ。

 仲井真氏は5月中旬、選対本部長に就く際、陣営に「候補が『県外移設』をあいまいにすれば説明がつかない。堅持してほしい」とクギを刺した。こうした意向も念頭に、自民党県連は地域版公約に「県外移設」を明記する方針だった。

 5月30日、東京都内のホテル。石破茂幹事長が「県外移設」の削除を求めると、県連幹部は「県内を主張して敗れればそれが『直近の民意』になる。辺野古移設は滞るのでは」と反論。石破氏は黙り込んだ。

 6月初めには安里氏も「県外移設」を訴えることを明言。結局、県連はビラに「県外移設」を書き込むことで事実上決裂。安里氏の選対会議では「県内、県外のどちらなのか。自民党支持層でも混乱を招いている」との懸念が上がった。

 ただ、選挙戦で分裂イメージは避けなければならない。安里氏が街頭で「県外移設」を訴えることはほとんどなくなった。ビラは3万部つくったが、いまは事務所に置かれたままだ。

 公示日の4日、石破氏は仲井真氏の横でマイクを握り、「普天間の危険性を一日も早く除去し、沖縄全体の負担を軽くする」と強調したが、移設先には触れなかった。記者団から理由を問われた石破氏は「候補者が訴えていない。全く違うことを言って、どうなるか」とかわした。

     ◇

 〈米軍普天間飛行場の移設問題〉1995年の米兵による沖縄県の少女暴行事件をきっかけに、在日米軍基地の返還交渉が本格化。日米両政府は96年に普天間飛行場(同県宜野湾市)の返還で合意し、2006年に名護市辺野古への移設を定めたロードマップを発表した。

 ところが、09年の政権交代で民主党の鳩山由紀夫首相が「県外移設」を主張。鳩山政権は新たな移設先を検討したが断念に追い込まれ、辺野古への移設に回帰した。裏切られた沖縄県内の反発は強まり、自民党沖縄県連も「県外移設」へとかじを切った。

 昨年末に自民党が政権に復帰すると、安倍政権は日米合意に基づく「県内移設」を推進。今年3月に辺野古を埋め立てるための申請書を沖縄県知事に提出した。だが、米軍の新型輸送機オスプレイ配備や「主権回復の日」式典の開催などで沖縄の反発は続き、移設の見通しは立っていない。

     ◇

■沖縄選挙区

改選数1。敬称略。四角囲みは推薦

金城 竜郎 49 諸新 幸福の科学職員

新島メリー 67 無新 〈元〉バスガイド

安里 政晃 45 自新 社福法人理事長=〈公〉

糸数 慶子 65 諸現 沖縄社大党委長=〈生〉〈共〉〈社〉〈みど〉

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