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(公約を問う)5:統治機構 分権・首相公選、高い難度

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道州制をめぐる各党のスタンス

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統治機構改革を巡るこれまでの流れ

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政治部・今野忍記者

 日本維新の会とみんなの党は道州制や首相公選制などの統治機構改革を声高に訴える。大阪では都構想も進む。一方、政権を握る自民党はどちらかといえば慎重だ。改革には憲法改正を伴うものもあり、簡単には制度を変えられない現実もある。

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■道州制導入、維・み意欲/自民、党内異論で後退

 「地方議会や地方自治体が猛反対の道州制の導入。霞が関が抵抗している地方分権。政治が議論ばかりして実行できなかった改革をしっかりと実行していく」

 維新の橋下徹共同代表は3日、日本記者クラブ主催の討論会で、統治機構改革を前面に打ち出した。大阪都構想を足がかりに中央省庁から地方への大幅な権限移譲を進めるため、道州制などの「統治機構の抜本改革」を目標に掲げる。

 都道府県を10〜12に統合して、権限や財源を国から地方に大幅に移管させるのが、道州制の基本的な考え方だ。地方行政区域が整理されて行政の効率化が進む一方、エリアが広くなるため地域によっては空洞化や過疎化が進む懸念もある。

 みんなは公約で、7年以内に「地域主権型道州制」へと移行するという工程表を示した。当初は維新との連携に意欲的だったが、橋下氏の慰安婦発言などをきっかけに維新とは選挙協力を解消。連携は物別れに終わっている。

 安倍晋三首相も第1次安倍内閣で道州制担当相を新設するなど道州制には前向きだ。自民党は公約で「地方自治体の機能を強化して地方分権を推進し、道州制の導入を目指す」と明記した。

 だが、党内には異論も抱えている。当初は公約で道州制を前面に打ち出す方針だったが、4月の党役員連絡会で慎重論が相次いだ。会議に出席したある参院幹部は「道州制は地方切り捨てと誤解されるから参院選の公約にはいらない」と言う。結局、「導入を目指す」という表現にとどめ、具体的な時期や工程は書き込まなかった。

 自民党は4月、公明党とともに道州制推進基本法案の骨子をまとめた。維新やみんなに呼びかけ、国会へ共同提出する予定だったが、それも見送った。

 民主党は道州制について公約に記載していない。公約では地域主権改革の項目で「地方自治体への権限・財源移譲、一括交付金の復活、国の出先機関の原則廃止に取り組む」と記す。

 公明党は公約で「道州制国民会議を設置し、3年かけて道州制移行へ国民的議論」と期限を設定した。共産党は取材に対し、「道州間の財政格差によって社会福祉や教育に大きな格差が生まれる」と指摘する。

■「人気投票」根強い反対

 1960年ごろ、「首相と恋人は私が選ぶ」をスローガンに首相公選制を主張したのは、中曽根康弘元首相だった。首相公選制の議論の歴史は古い。

 小泉純一郎元首相は2001年4月、首相就任後初の記者会見で「憲法はこうすれば改正できると国民に理解されやすいのが首相公選制だ」と主張。懇談会を立ち上げて報告書をまとめさせたり、自民党憲法調査会に検討を指示するなど導入に前向きだった。

 推進派は(1)国民が選ぶことで、政党間の駆け引きに縛られない安定政権ができる(2)国民の支持を背景に大胆な政策が実行できる(3)国民の政治への参加意識が高まる、といった利点を挙げる。一方、人気投票に陥る危険性があるとの指摘もある。

 今回、公約で首相公選制を強調しているのは、維新とみんなだ。

 橋下氏は「今の議院内閣制の総理大臣という立場ではリーダーシップを発揮できない」と訴える。維新は公約に「国民が直接リーダーを選ぶ制度として首相公選制を実現する」と掲げている。憲法改正を前提にしている。

 みんなは公約で「憲法改正を必要としない日本型首相公選制を導入。将来的には、憲法改正による首相公選制を導入する」と二段階論を提唱する。想定しているのは、衆院選で投票する際、「首相候補」をひとり選んで「参考投票」する仕組みだ。そうすれば改憲しなくても、実質的な首相公選制が担保されるとみる。

 実は、自民党は今回の公約では触れていない。政権幹部は「日本にはなじまない」と否定的だ。民主党も公明党も明記していない。公明党の山口那津男代表は4日、記者団に「人気投票になりがちな首相公選制は弊害をもたらすのではないか」と述べた。

 共産党の志位和夫委員長は「首相の権力を強化すれば権力の暴走が止められなくなる」と批判する。生活の党の小沢一郎代表は「議院内閣制でリーダーシップは発揮できないのか。(英国の)チャーチルは、サッチャーはどうなのか」と問いかける。社民党の福島瑞穂党首は「ポピュリズムになって独裁政治に陥りやすくなる」と反対だ。

■衆参ねじれ一院制に関心

 「ねじれ国会で決められない。速やかに一院にすべきだ」

 衛藤征士郎前衆院副議長(自民)は、3月の衆院憲法審査会で一院制を主張した。一院制については、超党派の議員連盟「衆参対等統合一院制国会実現議連」があり、衛藤氏は会長をつとめている。議連は参院選後、2019年までに一院制を目指すことを決議する方針だ。

 ねじれ国会のもと、一院制は党派を超えて関心を集めてきた。議連には民主党の前原誠司元政調会長らも所属している。前原氏は「国会がねじれて法案が通らなければ決められない政治になる。一院制は良い制度ではないか」と語っている。

 一院制には、速やかな審議や、人件費や選挙費用の削減につながるという肯定論がある一方、慎重な審議が出来なくなる、投票機会が半減して議会に民意が反映されにくくなるという否定的な意見もある。

 8対2――。

 参院の憲法審査会では5月、自民党など8党が二院制維持、みんなと維新が一院制への移行を主張した。

 維新は公約で「衆参合併により一院制を確立し、迅速な意思決定が可能な国会に変える。参議院の抜本改革の第一歩として、自治体首長と参院議員の兼職禁止規定をなくす」と明記。みんなも「衆参両院を一院制へと改める」と訴える。

 自民党や民主党は党内に一院制を主張する声を抱えながら、今回、公約では触れていない。参院議員を中心に現状変更への抵抗感が強いことも背景にある。自民党は昨年4月にまとめた憲法改正案で、「国会は衆議院及び参議院の両議院で構成する」と二院制を明記している。

 公明党の山口那津男代表は「一院だけでやるとそのまま多数の力が反映されやすい」と二院制を主張する。共産党の志位和夫委員長は「二院制の方が多様な民意を審議に反映し、熟議が行える」と語る。

〈視点〉改革には馬力 努力惜しむな

 【政治部・今野忍記者】

 6年前、東北地方のある県庁職員に、なぜ地元ニーズもないのに林道工事を進めるのかと尋ね、がくぜんとしたことがある。

 「ほとんど国の補助金だから、やらないのはもったいない」

 明治維新以来続く中央集権体制が制度疲労を起こしている、と言われて久しいが、今回の選挙ではなぜか「統治機構改革」は争点として目立たない。改革の必要性では一致していても、いざやるとなると馬力がいるのは確かだ。道州制や首相公選制、一院制など根幹を変える改革はなおさらだろう。

 それでも、変える努力は惜しまないでほしい。今の時代にどのような統治機構がふさわしいか。現状維持ではないはずだ。

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