歌手で俳優の福山雅治さん(43)が、ロンドン五輪の写真コラム「FUKUYAMA アングル」を連載することになった。2000年シドニー、04年アテネ、08年北京に続き、「カメラマン」として五輪を取材するのは4度目。ロンドンに向かう前に、思いを語った。
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元々スポーツにも五輪にも、あまり興味がなかったんです。でも、シドニー五輪で4年に1度の巨大なスポーツイベントが持つ「力」を感じて、すごく驚いた。
僕は自称「文化系」なので、スポーツばかりしている人は、あまりクリエーティブじゃないのではと、思ってたんです。バカな考えでしたね。現場で目にしたのは、世界中から選ばれたトップアスリートたちが競い合う、究極の表現の場でした。自分がやっている音楽や芝居より、表現者として圧倒的な説得力を持っていた。自分がやってることが生ぬるく見えて、逆にショックでした。
前回、08年北京大会で印象的だったのが、女子ソフトボールの上野由岐子投手。連投でボロボロになりながら、コントロールを維持し、生きた球を投げ続けた。ものすごく集中して、なおかつリラックスしてるっていう、スポーツ心理学的にベストな状態に見えました。あの大舞台で、あの領域で、ああいうパフォーマンスをする選手が、五輪には必ずいる。今回はなでしこジャパンなのか、男子サッカーなのか。はたまた個人種目なのか。日本は時差があって大変だけど、ぜひ、リアルタイムで見てほしいです。
五輪には、金メダルを取って当たり前のスーパースターがいる。かつてのカール・ルイス(米)とか、競泳のイアン・ソープ(豪)。今回で言えば、陸上のウサイン・ボルト(ジャマイカ)。彼が普通に金メダルとっただけでは、世界は感動しないと思うんです。ジャマイカの代表選考会では2位だったけど、本番では世界新で勝つ、というストーリーを世界中が望んでいる気がします。
個人的に楽しみなのは、僕の故郷の長崎出身の選手。体操の内村航平選手や、マラソンの藤原新選手は出身が諫早市で、うちのばあちゃんちの近くなんですよ。五輪って、才能だけでは出られない。天性の体の強さ、本人の頑張り、コーチや環境との「出会い」。そういうもの全てが必要な気がします。そうやって長崎から出てきた選手たちには、特に頑張ってほしい。
そして開催地について。今回知りたいのは、なぜ、いま、ロンドンなのか、ということ。僕の中には、五輪は経済的にまだもうちょっと発展したいと思っている国が、世界へのアピールをして、というイメージがあった。成熟した都市でやる意味について、今、さまざまな角度から情報収集しています。
ロンドンには数回行ったことがあるだけで、何が撮れるかはわからない。でも、五輪には、そこに行けば必ず何かがある。こちらから無理に接触しなくても、アスリートが放つ根源的な人間のエネルギー、そこに熱狂する観客、さらにはそれに引き寄せられる経済。そのすべての「熱」が、僕にとっての五輪なんです。(談)=写真は福山さん撮影