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聖地の芝に「シン高校野球」の痕跡 低反発バットで戦略と守備も変化

2024年4月2日07時00分

朝日新聞DIGITAL

 第96回選抜大会では反発性能を抑えた新基準の金属バットが採用され、転換期を迎えた感のある高校野球。バッティング以外にも、変化が見え隠れする。

 今大会の総得点数は200。コロナ禍前で、同じ32校が参加した第91回大会(2019年)の246から大きく減った。

 逆に大幅に増えたのが盗塁と犠打。盗塁は同大会比で17個、犠打は29個増えた。

 どちらも、第95回記念大会で36校が参加し35試合が行われた昨年をも上回った。

 今大会最多の13犠打を決めたのは、準優勝の報徳学園(兵庫)。28日の準々決勝・大阪桐蔭戦と30日の準決勝・中央学院(千葉)戦は、ともに一回に犠打を絡めて先制した。

 大角健二監督は「こういうバットになって、先制点はどこも欲しいと思う」と話す。

 「新バット時代」は、守り方にも変化が見て取れた。

 二塁に走者がいるときに、極端に外野手を前進させるチームが複数あった。頭上を越す確率が従来より低くなり、単打での生還を防ごうというのが狙いだ。

 大会初日の18日第3試合。近江(滋賀)は同点の九回2死二塁で極端な守備を敷いた。

 熊本国府の右打者を迎えたところで、左翼手が土と芝の切れ目から数メートルのところまで前進。球場がどよめいた。

 そこにゴロ打球が飛び、走者は三塁でストップ。後続を断ってこの回は無失点でしのいだ。

 ここまで極端でないにせよ、大会を通して外野の守備位置がこれまでと違ったことを、甲子園の芝が示している。

 グラウンドを管理する阪神園芸の金沢健児部長は「これまでの定位置に加えて、前の方(本塁寄り)まで芝の傷みが広がっている。試合数が増える夏の大会では、さらに影響が出るのではないか」と指摘した。

 長打が出にくく、得点も入りづらい。「投高打低」に拍車がかかった現状を、プロ野球の関係者たちはどう受け止めたのだろうか。

 「芯で捉えるだけの技術があるか、見極めやすくなる」

 大会序盤、バックネット裏で試合を見たスカウトの一人は、好意的に受け止めた。

 高いミート力は、プロが使う木製バットでも求められる能力。木製に適応しやすくなるだろうという声もあった。

 逆に、投手の評価が上振れしはしないか。

 別のスカウトは「ノーヒットノーランでも、我々にとっては参考データでしかない」。

 「球の質や投げ方、マウンドさばきなどを近くで見ている。評価がぶれることはないと思う」

 今大会を視察した野球日本代表「侍ジャパン」の井端弘和監督も新しいバットに言及した。

 高校時代、甲子園の外野にあった「ラッキーゾーン」が廃止され、バットも「消音バット」に切り替わった世代だ。

 「(当時)飛ばないと言われていたものが、いつしか飛ぶバットと呼ばれるようになった。時間はかかるかもしれないけれど、慣れてくれば対応できるんじゃないか」

(データ協力・データスタジアム)

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