「兄弟で甲子園」かなわなかったけど 健大高崎の佐藤が届けた勝利
(19日、第96回選抜高校野球大会1回戦 健大高崎4―0学法石川)
「ここは普通の球場。普段通りに」。健大高崎(群馬)の2年生左腕、佐藤龍月(りゅうが)は試合前、チームで行う座禅で心を整えた。
「兄がかなえることができなかった、甲子園での勝利を収める」
二つ上の兄・志龍(しりゅう)さんも同部のOB。野球を始めるきっかけになった存在だ。自分は15歳以下の日本代表に選ばれた経験があり、進学先の選択肢は複数あった。だが、「兄弟で甲子園」と同じ学校へ。
兄は昨春の選抜大会出場直前、けがでメンバーを外れ、チームも初戦で敗れた。この1回戦の前夜、「楽しんで。全力でやってこいよ」と電話をくれた。
試合は中盤まで両チーム無得点の投手戦になった。一塁側へ踏み込む独特のフォームから、得意のスライダーを淡々と投げ込み、カウントを整えた。得点圏に走者を背負ったのは2度だけ。7回を被安打2、9奪三振で無失点に抑えた。
今大会の“完封一番乗り”を期待させた充実の100球。「80点。完投したかった」と平静だったものの、兄に関して問われ表情を崩した。「『やってやったぞ』と報告したい」(大宮慎次朗)