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豊川のモイセエフが大会第1号 「力を抜いて」主将の言葉に導かれた

2024年3月19日18時51分

朝日新聞DIGITAL

 (19日、第96回選抜高校野球大会1回戦 阿南光11―4豊川)

 張り詰めた空気の中、ただ球に食らいつくことだけを考えていた。

 4点を追う八回裏、1死一塁で豊川のモイセエフ・ニキータ選手(3年)が左打席に向かった。それまでの3打席は緊張で体が硬くなり、いずれも凡退。相手の好投手に対して力みは抜けないままで、空振りを続けて追い込まれた。鈴木貫太主将(3年)にかけられた言葉を思い出した。「もっと力を抜いて、後ろにつなぐ気持ちで」

 3球目。高めの変化球を引っ張った打球は、右翼ポール際へ飛び込む2ランに。大会第1号のアーチは球種も感触も覚えていない。でも、すぐに右腕を突き上げ、ダイヤモンドを一周した。「絶対勝つぞ」。チームを奮い立たせる一発となった。

 大会屈指の強打者と注目された。入学時は体重66キロと細身で、打撃を強化するため筋力トレーニングに取り組み、2年間で約20キロ増やした。最上級生になると甘い球が来ず、警戒されていると感じることもあったが「それでも打てるバッターになる」と臆さなかった。幼い頃に空手で養った強い気持ちで、投手に立ち向かい続けている。

 昨秋の明治神宮大会は準決勝で大敗。「全国はレベルが違う」と痛感し、木製バットで打ち込んできた。「芯で捉えれば飛距離はそこまで変わらない」と話した通り、この日は低反発バットで高校通算16本目の本塁打を放ってみせた。

 九回裏、2死満塁で打席へ。しかし、この日3度目の三振で試合が終わった。最後の打者となり、「みんな『ニキータに回せ』と言ってくれて、本当に回ってきたのに打てなかった」と悔しさをにじませた。

 初めての甲子園は、課題も浮き彫りとなった。「チーム全員でレベルアップしないと勝てない。夏はまたここで試合をやりたい」(良永うめか)

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