〈まちの埋蔵文化人〉闇夜の高炉にメロメロ

写真・図版

「この形が好き」とお気に入りの工場に案内してくれた小林哲朗さん=兵庫県尼崎市、滝沢美穂子撮影

■工場求め東へ西へ 撮った写真3万枚 小林哲朗さん(32)

 工場を撮り始めて5年、写真は3万枚近くになる。

 「すげぇ!かっこいい」。抑えようのない興奮が、シャッターを切らせる。昨年、とうとう写真集まで発売した。

 きっかけは、デジカメを触り始めてまだ2、3年のころ、知人に誘われて堺市へ撮影に出かけた時だった。

 ウォーン、ウォーン、ウォーンとうなる、独特の稼働音。鉄柵の向こうでグル、グルと回る、直径2メートルはありそうな巨大な筒。近未来の「ネオ東京」を舞台にしたSFアニメ「AKIRA」の世界観とダブって映り、一瞬でハマった。

 夜は魅力がさらに増す。照明で闇夜に浮かび上がる巨大建造物には、造った人間さえ寄せ付けない存在感がある。月面基地や宇宙船にも見えるし、300ミリの望遠レンズで迫ると違う魅力がある。

 例えば、無数の配管。一見、無秩序に絡み合っているだけのようで、よくみると整然と並んでいる。その姿に、まるで芸術作品のオブジェを見ているような美を感じる。何かを製造するために、設計されただけなのに。

 本業は保育士。インターネットの航空写真で角張った埋め立て地らしき場所を見つけては、週末に出かける。お気に入りの工場に出合ったら、朝まで、空腹もトイレも忘れてカメラを構える。

 関西はもとより、東京、名古屋から瀬戸内沿岸まで。全国の主な工業地帯はほぼ制覇した。

 お気に入りは、製鉄工場の高炉だ。

 「男の仕事って感じしません?特に、塔の部分がさびたのがいい!脂ののった寡黙な50代の男、っていう感じで。鉄をドロドロに溶かして、『仕事に間違いはありません』って」

■マナーにご注意

 確かに、夜の高速道路から見える工場に見とれたことあります。小林さんのお薦めは、初心者に撮りやすいポイントが多い兵庫県姫路市。ただ、敷地内に無断で入る、仕事を邪魔する、といったマナー違反は厳禁、とも。(久永隆一)

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