(EYE モニターの目)今月のテーマ:日本学術会議をめぐる報道

EYE モニターの目

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 ■重要性かみ砕き、息長く

 世間の興味が薄れてきた印象だ。多くの国民にとって、学問の自由よりも携帯電話の料金が下がる方が重要で、一連の報道は「たかが6人で騒いでいる」というのがおおかたの受け止め方ではないか。報道機関が厳しく批判するほど、「菅首相は雑音に動じない強い首相」というイメージが強化されたり、「首相の改革の邪魔をしている」という反発を生んだりしないか懸念する。学問の自由の重要性を国民一人ひとりの問題としてかみ砕いて、息長く取り上げ続ける姿勢が必要ではないか。(松浦拓海 21歳 東京都)

 ■深刻な結末、広く伝えて

 今回の問題は、一般の人には直接的な危機として実感しにくい。そのことが「学術会議が既得権益を守ろうとしている」という誤解や、「野党の政権攻撃によってスピード感のある改革が妨害されている」という印象を生み、政権側の論点のすり替えを許しているのではないか。学問の自由への侵害に抵抗の声を上げないことが、私たちの暮らしと未来にどんな影響を及ぼしていくのか。丁寧な説明を重ねることによって、迎えるであろう深刻な結末を広く伝えてほしい。(前本ゆり 59歳 広島県)

 ■国費の理由、分からない

 学術会議が政府に意見するための機関であるなら、そもそもなぜ、政府が会員を任命し、日当や旅費などを国費から出す必要があるのか、よく分からない。政府からお金をもらっているのであれば、政府にとって都合の良い人が任命され、都合が悪い人は任命されないのは起こり得ることだ。一般企業と同じだと思う。そういう意見が新聞に全く載らないことが不満だ。政府に都合の良い人ばかりが任命されるとどんなことが起こるのか、シミュレーションする記事があっても面白い。(中村友理 40歳 東京都)

 ■研究者への圧力、記事に

 10月13日の耕論「学術会議 介入の意図」で、2人の識者が、政府による研究資金の「選択と集中」が科学者に圧力をかけてきたことに言及している。学術会議の歴史的変遷と政府との関係を吟味することは、6人の任命除外の真意を探る上でとても重要だ。改めて「選択と集中」に注目し、研究者の置かれてきた状況を国民に伝えることで、学術会議や研究機関、個々の研究者が政府による圧力を受け続けてきたことを明らかにする必要があるのではないか。(大柏一花 19歳 岩手県)

 <学問の自由の重要性、色々な角度で>

 首相による日本学術会議会員の任命拒否問題は、政治と学問との間に本来的にある緊張関係を浮かび上がらせました。

 学問は、既にある知識や秩序を問い直し、疑い、真理を探究する営みです。だからこそ、政治から圧力を受けたり、都合のいい方向に誘導されたりしやすい面があります。そうならぬよう、学問のことは学問をする人たちの共同体の自律性に基本的には任せる方が、社会が共有できる成果も豊かなものになるはずです。社会と地続きの「学問の自由」の重要性を、色々な角度から考え続け、モニターの方々の問題意識に答えていきます。学問の世界への弾圧を対岸の火事とみているうちにふつうの人たちも窒息していった戦前の悲劇が、憲法の「学問の自由」条項の背景にあることも忘れないようにします。

 学問には、理由や根拠を挙げて議論していく作法があります。ただこれは学問だけのものではありません。すべての人にとってよりよい社会を作るために必要なものであり、真の政治の根源的な要素でもあります。今回の問題でも、正当な理由や根拠はあったのか、どのようにものごとが決まったのか、過程を明らかにする努力を粘り強く続けます。(編集局長補佐・山口進

 ◇東京本社発行の朝刊、夕刊の最終版をもとにしています

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