(社説)デジタル課税 国際協調を結実させよ

社説

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 法人税の新しい国際ルールの原案を、経済協力開発機構OECD)が公表した。インターネットを使い、国境を越えたビジネスが展開される時代に合わせた対応だ。

 法人税の今の国際ルールは主に製造業を念頭に、およそ1世紀前に考えられた。原則として、工場や本社・支店といった拠点がある地域で課税する。今回の案ではこの原則に縛られず、拠点がなくても利用者のいる地域で課税できるとした。

 法人税の転換点となる可能性があり、見直す意義は大きい。

 対応が急がれるのは、GAFA(ガーファ)と呼ばれるIT大手が、拠点を持たずにネットを通じて世界中にサービスを提供し、税率の低い地域に利益を集めて、税負担を軽くする動きが問題視されてきたからだ。

 フランスをはじめ各国それぞれの基準で、デジタルサービスに税をかける動きもあったが、共通のルールをつくる方向で歩み寄った。最終的な詰めの作業はこれからだが、議論に参加する134カ国・地域が来年1月の大枠合意、来年末の最終合意をめざす。

 原案によると、対象となるのは、世界で商品の販売や音楽、映像、広告の配信といった消費者向けの事業を手がける企業。GAFAの本社がある米国が、IT大手にしぼった課税に反対していることにも配慮して、売上高に対する営業利益の割合が高いグローバル企業を、幅広く対象にする。

 企業が世界でもうけた利益のうち、一定の水準までは「一般的な利益」とし、これまで通り拠点がある国で課税する。水準を超える部分は企業のブランド力などがもたらした「特別な利益」とみなし、一部をそれぞれの国での売上高などに応じて各国が課税できるようにする。

 「一般的な利益」と「特別な利益」を分ける水準をどこに置くのか、国ごとの売上高をどのように計算して分配比率を決めるのか。そもそも対象企業をどう定義するのか。肝心な点を決めるのはこれからだ。

 各国が自国に有利な主張にこだわれば、合意は遠のく。新しい国際ルールの必要性を強く求めてきた日本も各国を説得し、着地点を探るべきだ。

 もう一つの新たなルールとして、法人実効税率の最低水準をそろえることでも、各国はおおむね一致している。この具体的な水準でも協調し、合意へと前進させなければならない。

 年内には公聴会なども予定されている。日々進歩するデジタルの特性も踏まえたうえ、できるだけわかりやすく、公平感のあるしくみをどう設計するか。世界中で知恵を出し合いたい。

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