(社説)サウジ攻撃 米とイラン対話実現を

社説

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 中東の情勢が緊張の度を高めている。とりわけ米国とイランとの対立が深刻になってきた。

 性急な行動は禁物だ。軍事衝突に陥りかねない危機を防ぐために両国は自制し、直接対話を始めるよう強く促したい。

 新たな事件は先週、サウジアラビアで起こった。石油施設が爆撃され、サウジの原油生産の約半分が一時停止した。

 急きょサウジ入りしたポンペオ米国務長官は「イランの攻撃だ」と断定し、「戦争行為だ」と述べた。真相が明らかでないなか、一足飛びに戦争を口にするのはあまりに危うい。

 トランプ大統領は軍事行動には慎重だが、イランに「重大な制裁」を科すという。だが、このまま突き進めば偶発的な衝突のおそれも強まる。

 緊張緩和の模索こそ急務だ。40年にわたり国交のない米国とイランが相互不信を解きほぐすには話し合うしか道はない。

 今回の事件のタイミングについては様々な臆測がでている。トランプ氏は、今週からの国連総会を機にイランのロハニ大統領と会談することに前向きだった。その妨害をねらう勢力が仕組んだとの見方もある。

 背景がどうあれ、両国指導部はこの卑劣な破壊行為に対話の行方をゆだねてはなるまい。

 いまの緊張の発端は、米国が昨年、イランの核開発をめぐる多国間合意から一方的に離脱したことである。米国には安定の枠組みを再建する重責があることを忘れてはならない。

 今回の事件で犯行声明を出したのはサウジの隣国イエメンの反政府組織「フーシ」だ。だがサウジ政府はイランの無人機による攻撃だと非難し、イランは全面的に否定している。

 国連は専門家をサウジに派遣し、調査結果を安全保障理事会に報告することになった。米国がイランを名指しする証拠を持つなら、国連に示すべきだ。

 今回の問題は、イエメンで続く紛争が飛び火する危険性も示した。「アラブの春」を契機とした内戦は4年以上続き、地域で覇権を争うサウジとイランの代理戦争の色合いを強めた。

 この間、イエメンの人口の3分の1にあたる1千万人が飢餓寸前であえぐ人道危機が続いている。国連の仲介で昨年末に一部の戦闘停止で合意したが、全土の停戦はほど遠い。国連を先頭にして国際社会が和平づくりへもっと力を注ぐべきだ。

 日本は輸入原油の9割を中東に頼っている。サウジの事件などを機に、中東の安定を平和的な外交努力で築く意義を再認識すべきだろう。米国とイランの双方と友好関係にある日本の安倍首相は、改めて緊張緩和への仲介に動いてもらいたい。

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