(社説)マイナンバー カード普及策は再考を
消費税対策に名を借りた、ばらまきにならないか。
政府が来夏以降、マイナンバーカードを持つ人を対象に、スマホのQRコードなどキャッシュレス決済でのポイント還元を新たに始める。入金額に、国のお金でポイントが上乗せされるしくみで、2万円の入金に5千円分をつける案も挙がる。
今年10月の消費税率引き上げに合わせ、政府は来年6月までキャッシュレス決済へのポイント還元を実施する。この対策後の「消費活性化策」として検討するという。同時に、低迷するマイナンバーカードの取得を促すねらいもある。
交付開始から3年半が過ぎたが、現在の交付枚数は1777万枚で、取得率は約14%にとどまる。政府は2020年度末に6千万~7千万枚に急増させ、22年度末までに、ほぼすべての人がカードを持つと想定する。
12けたのマイナンバーは、税務署や自治体など行政サービスの効率化とともに、税や社会保障の公平、公正を実現する狙いで導入された。
政府はマイナンバーカードを「利便性の高いデジタル社会の基盤」と位置づけ、普及に力を入れる。カードは写真つきの身分証明書としても使われ、公務員には一斉取得を進めている。カードを使い、コンビニで住民票を取るサービスも広がってきた。ほぼすべての医療機関で健康保険証として使えるよう、システムの整備も急ぐ。
ところが、昨秋の内閣府の調査では、取得の予定が今後もない人が53%にのぼり、うち6割近くは必要性が感じられない、を理由に選んだ。2割以上は、個人情報の漏洩(ろうえい)や紛失、盗難を心配した。
プライバシーと結びついたマイナンバーは生涯使うもので、政府も「むやみに他人に見せることはできない」としている。それを記載したカードを、あちこちで便利に使えるようにすることに、抵抗感がある人も多いのではないか。
カードの普及を図るのであれば、その必要性を丁寧に説明し、国民の懸念解消に努める。それこそ政府の責務だ。ポイントで国民の気を引こうとするなど、論外だ。
増税から1年後の景気対策がどこまで必要なのか、キャッシュレス決済の普及の後押しが優先すべき政策課題なのかも、議論は尽くされていない。
新たなポイント還元にかかる費用は来年度、市町村の事務経費や様々なシステム整備なども合わせると、数千億円規模にもなりそうだ。
問題が多すぎる。ポイント還元の実施ありきではなく、白紙から再考すべきだ。
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