与野党ともに敗北を喫した。そう言われても仕方あるまい。

 48・80%。今回の参院選の投票率は5割を切り、1995年の44・52%に次ぐ、戦後2番目の低さとなった。

 候補者すべての得票の合計を棄権が上回ったことになる。議会が民意を正当に反映しているか疑われかねない。

 自民党は選挙区の改選数74のうち5割にあたる38議席を獲得した。しかし、棄権した人を含む有権者全体に対する絶対得票率は2割を切っている。

 安倍首相は「国民の皆さまからの力強い信任をいただいた」と胸を張るが、与党、野党の別なく、代議制民主主義の基盤を掘り崩す深刻な事態と受け止めるべきだ。

 期日前投票は参院選で過去最多となったが、当日の投票が伸びなかった。九州の大雨も影響したが、投票率が前回を上回ったのは高知県だけで、全国の20選挙区が戦後最低を記録した。

 投票しても政治は変わらない。投票したい候補者や政党がない。そもそも、政治に関心がない……。棄権の理由はさまざまだろう。なかには、現状維持でいいので、わざわざ投票に行くまでもないと判断した人もいるかもしれない。

 まず問われるべきは、有権者を引きつけることができなかった政党、政治家の責任だ。

 安倍自民党が6連勝した国政選挙の投票率は、いずれも60%を下回っている。2014年の衆院選の52・66%は戦後最低、17年の衆院選の53・68%は2番目の低さだった。

 「安倍1強」のもと、多様な民意に向き合おうとしない強引な政権運営が続いていることと無縁ではないだろう。

 今回の参院選にあたっても、国会の論戦を回避し、「老後2千万円報告書」など不都合な現実にはふたをした。「安定か、混乱か」と、6年以上前の民主党政権をあげつらい、重要な政策課題について国民に問いかける姿勢は乏しかった。

 野党の力不足も大きい。全国32の1人区すべてに統一候補を立て、一定の効果はあったものの、明確な争点をアピールできず、より多くの有権者を糾合するうねりは起こせなかった。

 手続きが簡単な期日前投票が定着する一方で、人口減少が進む地方を中心に投票所の数が減っている。午後8時の投票終了時間を繰り上げる自治体も少なくない。投票率を上げるには、制度面の手当ても必要だろう。

 有権者の政治参加が細っていくのを、このまま見過ごすわけにはいかない。政党や政治家が民意とかけ離れた存在になれば、民主主義そのものが危うい淵に立つ。