(社説)沖縄慰霊の日 日本のあり方考える鏡

社説

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 沖縄はあす、「慰霊の日」を迎える。

 第2次大戦末期の3カ月超に及ぶ地上戦で20万人以上が亡くなった。日本側の死者18万8千人のうち、沖縄県民が12万2千人を占める。県民の4人に1人が犠牲になったといわれる。

 なぜこんな凄惨(せいさん)な事態を招いたのか、原因は様々だ。

 個を捨て国家に殉ぜよという教育。戦局について虚偽情報を流し続けた果ての疎開の遅れ。本土侵攻を遅らせるために沖縄を「捨て石」にした作戦――。県民の命や権利よりも政府・軍の論理と都合が優先された。

 15歳の少年や高齢者も現地召集され、女子生徒も構わず激戦地にかり出された。法的根拠のない「根こそぎ動員」だった。兵役年齢を広げ、女性にも戦闘部隊入りを義務づける法律が公布されたのは6月下旬。沖縄での日本軍の組織的戦闘が既に終わったころだった。

 それから74年。国策の名の下、県民を顧みず、定められた手続きなどに反しても、正当化して平然としている国の姿が、いまも沖縄にある。辺野古をめぐる状況もその一つだ。

 仲井真弘多(なかいまひろかず)知事(当時)が埋め立てを承認した際に条件とした県と国の事前協議などは、事実上ほごにされた。環境保全のため、埋め立て用の土砂が申請通りの成分になっているかを確認したいという県の求めを、国は無視し続ける。今月からは、県に提出した説明書とは異なる護岸を使って、土砂の陸揚げ作業を新たに始めた。

 玉城デニー知事が「国は法令順守の意識を欠いている」と批判するのはもっともだ。

 辺野古だけではない。

 今月初め、浦添市の中学校のテニスコートに、米軍ヘリの部品のゴム片が落下した。米軍は「人や物に脅威をもたらすものではない」というが、県議会は自民党を含む全会一致で抗議の意見書と決議を可決した。

 学校上空を飛ぶのを「最大限可能な限り避ける」と約束しながら一向に守らず、事故を繰り返す米軍。手をこまぬいたまま、原因が究明されなくても飛行を容認する政府。両者への怒りと失望が、党派や立場を超えて意見書に凝縮されている。

 戦後、基地建設のため「銃剣とブルドーザー」で土地を取り上げた米軍への反対闘争にかかわった故国場(こくば)幸太郎さんが、本土復帰直後に若者向けに書いた「沖縄の歩み」が、岩波現代文庫から今月復刊された。

 「まえがき」にこうある。

 「沖縄の歴史を知ることは、(略)日本の真実の姿に照明をあて、日本の前途を考えるためにも必要なことです」

 その言葉は、胸に一層響く。

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