領土問題の戦争による解決を肯定するかのような言動は、平和国家・日本の国会議員として失格である。速やかに議員を辞職すべきだ。

 北方領土へのビザなし交流の訪問団に、「顧問」として同行した日本維新の会の丸山穂高衆院議員である。

 丸山氏は11日夜、国後島の宿泊施設での懇談の場で、元島民の団長に対し、いきなり「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と切り出した。「戦争するべきではない」と否定されると、「戦争しないとどうしようもなくないですか」とたたみかけた。

 丸山氏は酒に酔っていた。東京に戻った後、「誤解を与える不適切な発言」として、謝罪・撤回をしたが、「不適切」というレベルを超えた問題発言であり、酒の上でのことと見過ごすわけにはいかない。

 憲法9条は国際紛争を解決する手段としては、戦争を放棄するとしている。北方領土を武力で取り戻すという選択肢は、そもそも日本の国是に反する。

 しかも、1992年に始まったビザなし交流は、領土問題の解決に向け、元島民らと北方四島に住むロシア人との交流を通じて両国の信頼関係を構築するための事業だ。そのような場で、戦争による問題解決に言及するのは非常識極まりない。

 丸山氏はルールに反して、夜間に外出しようともした。この交流事業は、日ロ双方の法的立場を損なわないよう、微妙な取り決めのうえに成り立っている。言動には細心の注意が必要なのに、顧問である議員自ら規律を乱すなどもってのほかだ。

 90歳近い元島民の団長は、からむように質問を続ける丸山氏に対し、「戦争はすべきではない」と何度も繰り返した。戦争によって故郷を奪われた悲痛な体験を踏まえた見識である。戦後生まれの35歳の丸山氏と、なんと対照的なことか。

 丸山氏はきのう日本維新の会に離党届を提出したが、党は受理せず、除名処分とした。党代表の松井一郎・大阪市長は「国会議員として一線を越えた発言だ」と批判し、自ら議員を辞職するよう促した。

 丸山氏は15年末、東京都内で飲酒した際、トラブル相手の男性の手をかみ、警察沙汰となったことがある。党から厳重注意を受け、議員在職中の禁酒を誓ったが、17年の総選挙後に「解禁」していたのだという。

 政治家としての見識を欠き、自らを律することもできないのでは、国会議員の資格がないと言わざるを得ない。本人は無所属で活動を続ける意向を示した。となれば、衆院として辞職勧告を検討すべきではないか。