(論壇時評)ジェンダー対立 意識の溝、構造から変えよ ジャーナリスト・津田大介

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 男女同数の候補者擁立を政党に求める候補者男女均等法(日本版パリテ法)が施行されて初めての統一地方選が終わった。女性の政治参加は着実に進んでいる一方で、統計で見ると「均等」には程遠い状況が見えてくる。各政党とも統一地方選前半の女性候補者割合は5割を切っており、与党自民党に至っては4・9%の女性候補者しか立てていない。

 法律ができても女性が立候補しにくいのは、現場に長時間労働を前提とする昔ながらの選挙スタイルが定着し、有権者に「政治は男性のもの」「子育ては女性がするもの」という性的役割分業の意識が強く残っているからだ〈1〉。女性候補者に対して一票の力を振りかざし、セクハラやモラハラを行う男性有権者からの「票ハラ」も大きな壁になっている。

 男性モデルが規範となっている社会では、女性の問題は周辺的で特殊な問題として片付けられてしまいがちと語るのは三浦まりだ〈2〉。女性議員の増加は、性暴力や家事・育児分担の不均衡など、国会で後回しにされてきた問題を普遍的な政治課題にする効果があるという。

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 こうした構造的な問題を大学1年生にもわかる平易な言葉で問題提起したのが上野千鶴子だ。上野は東京大学の入学式で、女子学生のみ直面する環境的な性差別や、東大の男子学生5人が2016年に起こした強制わいせつ事件を例に挙げ、「がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています」「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげ」という祝辞を述べた〈3〉。パンチの利いたこの“祝いの言葉”は、瞬く間にネット上に広まり、地上波のワイドショーで取り上げられるまでの「現象」となった。

 上野のスピーチに多くの共感…

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