(社説)桜田大臣辞任 守り続けた責任は重い

社説

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 昨年10月の就任当初から、閣僚としての資質を疑わせる言動を繰り返していた。辞任は遅きに失したというほかない。

 東日本大震災の被災地、岩手県出身自民党衆院議員のパーティーで、「復興以上に大事」なこととして、この議員への支援を呼びかけた桜田義孝五輪相が辞任に追い込まれた。

 2万人を超す死者・行方不明者を出した震災である。被災地は復興の途上にあり、行政が把握しているだけでも5万人以上がなお避難生活を送る。被災者を軽んじ、復興への努力に水をさす発言に怒りを禁じ得ない。

 桜田氏は2月、競泳の池江璃花子(りかこ)選手が白血病を公表した際に「がっかりしている」と、感想を述べた。池江選手への気遣いより、メダルや国威発揚を重視するかのような発言に、厳しい批判が集まった。

 にもかかわらず、パーティーでは聴衆に向けて「(乾杯前のあいさつが続き)がっかりしているんじゃないのか。『がっかり』という言葉は禁句なんですけど」と冗談めかして語った。

 選挙の応援演説で、受けを狙うかのように「忖度(そんたく)」という言葉を繰り返した塚田一郎・前国土交通副大臣と同じである。政治家として不見識極まる。塚田氏の辞任で、常にも増して言動に注意すべきなのに、その自覚もうかがえない。

 就任して4カ月たつのに、五輪憲章を読んでいない。サイバーセキュリティー担当でもあるのに、パソコンを使ったことがない。国会でそんな事実が明らかになった。「答弁書を間違いのないように読むことが最大の仕事」と述べたこともある。

 失言以前に、閣僚の職責を理解していなかったと言わざるをえない。

 そもそも昨秋の内閣改造は、安倍首相が3選を決めた自民党総裁選の露骨な論功行賞人事だった。閣僚としての能力や適性より、各派閥が推した入閣待機組の起用が目立った。桜田氏もその一人である。

 首相は一貫して、桜田氏を「適任」だとかばい続けてきた。今回の辞任を受け、「任命責任は私にある」と記者団に語ったが、その責任をどれほど重く受け止めているのか。

 これまでの擁護姿勢から一転、発言の直後に事実上の更迭に踏み切った判断も、統一地方選や衆院補選などへの影響を最小限に抑えたいからだろう。

 首相は塚田氏の辞任後、「全閣僚、副大臣、政務官が気を引き締め、国民の負託に全身全霊をもって応えていかなければならない」と強調した。桜田氏の問題発言はその5日後に飛び出した。首相の「反省」の本気度が問われている。

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