岸田文雄首相(自民党総裁)は憲法記念日の3日、東京都内で開かれた憲法改正派の集会にビデオメッセージを寄せ、「社会が大きく変化し、憲法改正がますます先送りのできない重要な課題となる中、国民に選択肢を示すことは政治の責任だ」とし、改めて改憲への意欲を示した。

 首相は、大規模災害時の議員任期の延長といった緊急事態条項の創設などに触れつつ、「いたずらに議論を引き延ばし、選択肢の提示すら行わないということになれば、責任の放棄と言われてもやむを得ない」と強調した。

 ただ、これまで主張していた今年9月までの総裁任期中の改正には言及せず、「党派を超えて真摯(しんし)に議論を行う姿を国民に見せたい」などと述べるにとどめた。改憲のための国民投票を行うには国会発議から60~180日間の周知期間が必要な一方、6月の今国会会期末までに衆参両院で改正原案を可決・発議するのは日程的に厳しい状況にある。

野党「裏金議員に議論する正当性あるか」

 一方、都内で開かれた護憲派の集会に出席した立憲民主党の逢坂誠二代表代行は自民派閥の裏金事件に触れ、「法律を犯しているかもしれない裏金議員の方々に憲法の議論をする正当性はあるのか」と指摘した。

 共産党の田村智子委員長は、4月の日米首脳会談で米軍と自衛隊の「指揮統制」の連携強化を確認したことなどについて「武力で平和は守れない」と批判し、「戦争の放棄」を定めた憲法9条に基づき、対話を続けることこそが重要だと訴えた。社民党の福島瑞穂党首は、同性婚を認めていない民法などの規定は違憲とした札幌高裁判決などに触れ、「憲法改正ではなく、憲法を生かしていこう」と呼びかけた。(宮脇稜平、小林圭)