東京・池袋で高齢者が運転する乗用車が暴走して2人が死亡し、運転手を含めた10人が重軽傷を負った事故から5年となった19日、妻の真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)を亡くした松永拓也さん(37)ら遺族が現場近くの慰霊碑を訪れ、発生時刻の午後0時23分に手を合わせた。

 松永さんは遺族としての経験を講演で話すなど、交通事故を減らすための活動を続けている。「真菜と莉子は天国で待ってくれている。今は自分のできることをやって、いつか『お父さんは頑張って生きたよ』と伝えたい」と報道陣に話した。

受刑者と面会へ

 運転していた飯塚幸三受刑者(92)に損害賠償を求めた裁判は昨年10月に終わった。今年3月には心情等伝達制度を使い、自分の思いを伝えた。松永さんの面会の申し入れを受刑者は受け入れる考えを示している。「裁判が終わり、フェーズが変わった。今後は彼の本当の言葉を聞いて、事故による経験を社会の糧にしたい」。近く日程調整をするという。

 この日は献花が絶えず、親子で訪れる人もいた。カメラマンの小暮将司さん(30)は家族で慰霊碑に手を合わせた。事故後に松永さんと知り合い、一緒に野球をする仲だという。「自分にも子どもが生まれた。子どもを失うつらさは想像できない。事故を少しでも減らせる世の中になればいい」と話した。(御船紗子