寺島笑花、小川崇
2023年11月、原爆投下国である米国で被爆体験を伝えるため、海を渡った長崎の被爆者たち。だが、講演を続けながら、被爆者の三田村静子さん(82)は悩んでいた。ある公立高校では、口からガムを出して伸ばしたり、携帯をいじったりする生徒の姿が目立った。質問や感想を募っても反応はない。ある晩、メンバーにその悩みをぶつけた。「思いが伝わっていないんじゃないか」
ツアーを発案した被爆者で医師の朝長(ともなが)万左男さん(80)は、「本音が聞けていないのではないか」。そう感じていた。
渡米前の想定と違っていたことがあった。「反発の声」のなさだ。米国で被爆体験を語れば、日本軍の残虐行為や真珠湾攻撃を挙げて批判されることもあるだろうと覚悟していた。原爆を開発し投下した国。原爆使用は正当だったとする考え方が根強いと聞いていたからだ。
拡大する教会で行われた講演会後、「一緒に平和を築きましょう」と言いアメリカ人夫婦と手を握り合う三田村静子さん(中央)=2023年11月8日、米ノースカロライナ州ローリー、竹花徹朗撮影
たとえそうなったとしても、本音を語り合い、憎しみを超えて核廃絶をめざしたい。その思いを「Hope&Healing Tour」という名前に込めていた。
しかし、聴衆からそんな厳しい…