保育施設で相次ぐ事故や事件。近年、「保育の質」が低下していると懸念されています。全国保育士会副会長で、保育現場で長年、保育士として働いてきた北野久美さんは「保育そのものが成り立たなくなっている」と言います。保育の質は変わったのか? 不適切保育はなぜ起きてしまうのか? 話を聞きました。

 ――保育の質とは何でしょうか。

 一般的に「質」を判断する際、商品の金額やブランドなど分かりやすい指標がありますよね。例えば、「100グラムあたり150円の豚肉と、1人前8千円のコース料理に出てくる豚肉、どちらの質が高いですか」と聞かれたら、大半の方は後者を選ぶでしょう。

 一方、保育の質は、はかりづらいものです。保育の柱は「子どもの健全育成」と「保護者の就労支援」「地域を含めた子育て支援」で、保育の質はこの3本柱に対する評価ではかるものだと思います。

 でも、一般的には保育がどういうものか理解されておらず、質についても誤解があると感じています。

 ――どんな誤解ですか。

 保護者のなかには、子どもの健全育成よりも、「勉強や運動などの早期教育をしてくれるか」「夜遅くまで預かってくれるか」といった観点で質を捉える方もいます。

 各家庭の要望に応えられるかどうか、カスタマイズしてくれるかで、保育の質を判断される場合もあって非常に残念です。

寄せ集めの弊害 保育観も進め方もバラバラ

 ――待機児童対策で規制緩和が進められ、「保育の質は低下した」との指摘もあります。どのように受け止めていますか。

 保育の質を考える手前段階で、保育そのものが成り立たなくなっていると感じます。

 私が入職した数十年前、周りの…

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