頭をたたかれる。胸を突かれる。階段で突き飛ばされたこともある。言われたことができなかった時やミスをした時、指導者の暴力は日常的だった。
高校時代のことを振り返ってくれたのは、ある20代の男子大学院生だ。関東の公立高の野球部でプレーしていた。チームメートも同様の暴力を受けていたとい 「もう何とも思っていなかったですね。こんなもんだろう、と。されるがままでした。こちらが突っかかれば、試合に出られない可能性もありましたから。部をやめるかやめないか、という話にもなってしまう。何もできない状況でした」
しごきも受けた。ミスした罰としてジャンプ100回、100メートルの罰走を10往復……。練習試合で負け、繰り返しヘッドスライディングをさせられた。ユニホームはやぶけ、手から血がにじんだという。
そんな中、ボールを投げられなくなった。ひじを上げているつもりでも、上がっていない。ボールに指先が掛かっている感覚もない。チェンジアップのような軌道しか描けなくなった。
心理的な理由から思い通りの動…