6月上旬、激しい雨のなか、名古屋駅近くの会議室に航空機部品メーカーの社員ら約60人が足を運んだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の幹部らを講師に招き、デジタル技術のトレンドを学んだ。

 「旅客機は成長産業。発注に対応できるよう準備を進めないといけない」。中部航空宇宙産業技術センターの平上雄一・総務部長(61)は、この勉強会の狙いをそう説明する。部品メーカーのほかに自治体も入るセンターは、こうした勉強会を定期的に開いている。

 愛知県を中心とする中部地区は、戦時中に日本軍の戦闘機を生産して航空機産業の集積地になった。戦後は米ボーイングなどの旅客機の部品や部材づくりも請け負うようになった。

 三菱重工業が開発に挑んだ国産初のジェット旅客機スペースジェット(SJ、旧MRJ)も、中部で量産する予定だった。SJの開発は中止になったが、平上氏は「中部が航空機産業の中心地であることに変わりはない」。コロナ禍の収束とともにボーイングや欧州エアバスの旅客機が増産され、部品や修理の注文も増えると期待できるためだ。旅客機を丸ごとつくらなくても、「下請け」として発展していけばよいというわけだ。

 三菱重工も「引き続き民間航空機事業にとりくむ」(泉沢清次社長)として、3月に愛知県のエンジン修理工場を拡張した。仏パリで今月19日から始まった航空機の展示会には、岐阜県に工場がある旭金属工業(京都市)など日本の部品メーカーも出展している。

 だが、日本勢が得意とする旅客機の胴体や翼づくりは、高い技術力が求められる割に、もうけが大きくないのが実情だ。航空機のコストの多くは操縦システムや内装といった「装備品」で占めるからだ。IT化で重要性も高まりつつあるのに、日本勢で担えるメーカーはまだ一握りしかない。

 日本航空宇宙工業会によると、…

この記事は有料記事です。残り655文字
ベーシックコース会員は会員記事が月50本まで読めます
続きを読む
現在までの記事閲覧数はお客様サポートで確認できます
この記事は有料記事です。残り655文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料記事です。残り655文字有料会員になると続きをお読みいただけます。