2021年2月、栃木県足利市の両崖山付近で発生した大規模な林野火災(西宮林野火災)から約2年を経て、市では新たに「足利市林野火災対応マニュアル」を策定した。それに沿った形で、災害対策本部の開設と運営や、消防の消火訓練を31日に行った。

 21年の山火事は2月21日に発生してから3月15日の鎮火宣言まで23日間を要した。空気が乾燥していた上に強い北よりの風(赤城おろし)が吹く時期に当たり、火の手が広がり、一時は約100世帯に避難勧告が出された。人的な被害や住家への延焼は免れたものの、初動対応など検証が行われた。この報告書を受けて「林野火災対応マニュアル」が作成された。作業を通じて、消防本部と市の間、市と県や関係機関との間での情報共有や連携を改善する必要が明確になった。

 この日の災害対策本部の訓練は早川尚秀市長以下、各部の幹部や陸上自衛隊第12特科隊の大塚恭司・第3中隊長、県の松川雅人・危機管理監も出席して進められた。会場には災害情報共有システムが置かれ、日曜日の午後3時30分に119番通報があったという想定で開始された。火災発生から規模の確認、災害対策本部の設置、関係機関への連絡など、マニュアルを傍らにそれぞれの職務を確認しながら進められた。

 同時に両崖山では市消防本部や消防団員が救助活動をしたり、ホースを接続して山上まで延ばしたり、消火器具の水囊(すいのう)を背に登山するなどの活動をした。

 早川市長は「意思決定の過程を具体的に共有できた。今後も継続的な訓練やマニュアルの見直しが重要だ」と講評。県の松川危機管理監は足利市での山火事への対応検証が、22年11月の日光市での山火事でも参考になったといい、「初動対応が大事で、市役所内はもちろん、関係機関との連携が大事。情報の共有も欠かせない」と話した。併せて日時や内容を非公開で行う「抜き打ちの訓練」を県で実施する計画を紹介した。空気が乾燥し、落ち葉が降り積もり、空っ風が吹く――山火事が起きやすい時期を迎える中、早川市長も「本番の際には台本はない。即座の判断が求められる。市でも行うことを考えたい」と話した。(根岸敦生

 ◇新マニュアルの要旨

①市消防本部と危機管理課の連携

消防本部から危機管理課への参集要請の基準を規定、消防活動に関する無線での情報の共有

②消防本部と県の連携

林野火災が発生したら県との連携を図る(消防防災航空隊への連絡、情報の共有)

③災害対策本部の設置基準

設置基準を明確にした。(最大風速が毎秒約5メートルを超えた、超える見込みの時、住家まで約500メートルに迫っている時など)

④災害対策本部で連絡する関係機関の明確化

陸上自衛隊や国交省渡良瀬川河川事務所、宇都宮地方気象台、足利署、県安足土木事務所等への連絡と連絡役(リエゾン)の派遣要請。

⑤外部消防機関への応援要請

両毛地区(佐野市、群馬県館林市、太田市、伊勢崎市、桐生市)→県広域消防応援隊→緊急消防援助隊の要請順で行う。自衛隊へのヘリ派遣の準備。

⑥市役所内の部署の仕事の明確化

総合政策部など7部のほか、議会事務局や教育委員会など、全庁で分担する職務を明示した。

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