映像業界をやめた理由のトップは「長時間労働・休みがない」。「乗り越えた人、生き残れた人はどこか鈍感になったり当たり前だと思ったりしている部分がある」として、NPO「映画業界で働く女性を守る会(swfi)」が「なぜやめた?」と問いかけたところ、118人が回答しました。アンケート結果からは、映像業界の過酷な労働環境やハラスメントなどの問題が浮かび上がります。swfi代表で、映画現場でフリーランスの小道具として働くSAORIさん(38)は「ハラスメントの背景には長時間労働など複合的な問題がある」と指摘し、子育てしながら働ける環境づくりやフリーランスだからこそできる「選択」の重要性について語ります。

さおり
1984年生まれ、東京都出身。2001年にボランティアスタッフとして映画業界に入り、フリーランスとして様々な映画やドラマの小道具を担当。出産を機に業界で子どもを育てながら働く難しさに直面し、NPO法人「映画業界で働く女性を守る会(swfi)」を立ち上げた。

 ――「やめた人」の声を集めようと思ったのはなぜですか

 「映像業界では、新人が入ってこない、やめてしまうという人手不足が問題となっています。でも、心が折れて逃げるようにやめていったり、やめることについて話し合う時間もほとんどなかったり。今仕事をしている人も、やめたかった時期とかつらかった時期とか多々あったと思う。私自身、若い頃に仕事に慣れなくてつらくて、『やめてやる!』と現場の帰り道を泣きながら帰ったこともありました。でも、乗り越えた人、生き残れた人は、どこか鈍感になったり当たり前だと思ってしまったりしている部分もある。やめた人の決定打になったことや理由はどんなものなのか、実際にやめた人の声を聞くことで、見えてくるものがあるのではないかと思いました」

 ――ウェブで募ったアンケートに118人が回答し、11月に結果を発表しました。結果についてどう受け止めていますか

 「団体の性質もあるかもしれないですが、女性の回答者が7割以上で、女性がやめることが多いということのあらわれであると思いました。年代は20代が最多で、30代、40代と続き、制作や助監督など特に大変と言われる部署の回答が多く、意思決定を行う立場だったかという質問には『いいえ』が大半を占めました。また、想像通りではありますが、フリーランスの人がすごく多かったです」

映画界で性暴力やハラスメントの告発が相次いだことを発端に、文化芸術界で「#MeToo」の動きが広がりつつあります。問題の背景に何があるのか、今何ができるのか。声を上げた人、被害者を支え連帯する人たちに聞きました。

 「やめた理由は、複数回答だと『長時間労働・休みがない』が多く、『将来に不安を感じた』が続いた。それが、複数のやめた理由の中で『最も強い理由』となると『パワハラ・モラハラ』が1番になりました。あとは『妊娠・出産』と『育児』を今回はあえて分けて尋ねたのですが、二つを合わせるとそれがトップになるので、女性や、子どもを育てながら働いていくことが難しいと改めて分かりました」

子育てしながら働けるようになるには…

 ――特に自由記述欄では悲痛な声が目立ちます

 「『上の立場の人たちが怖い(…

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