愛犬家・西郷さん、温泉も戦場も犬と一緒 「犬の日」前に足跡たどる

有料記事

太田匡彦
[PR]

 旅行も外食も犬と一緒。そのためにも、きちんとしつけをする。つける首輪やリードにこだわり、語りかけもする。現代の日本で犬を飼う人なら誰もが心当たりがあるでしょう。

 150年前にも、そんな現代的な愛犬家がいました。犬連れの銅像で有名な西郷隆盛がその人です。西郷がどんなに犬を愛したか、鹿児島県内にはあちこちにその痕跡が残っていました。「犬の日(11月1日)」を前に、西郷と犬たちの足跡を訪ねました。

 鹿児島市中心部を出発し、車で国道226号を南へと向かう。左手に錦江湾(鹿児島湾)の青い海が広がる。砂蒸し風呂で知られる指宿温泉を過ぎたあたりで、右手に折れる。山道をしばらくいくと、車中にまで硫黄のにおいがただよってきた。

 鰻(うなぎ)温泉(鹿児島県指宿市)。鰻池に面した小さなこの温泉地に1874(明治7)年2月、西郷は13匹もの犬を連れて突然現れ、福村市左衛門宅におよそ1カ月も滞在した。「西郷さんは毎日のように4、5匹を選んで連れて、鷲尾岳あたりにウサギ狩りにでかけたそうです。獲物はスメで蒸して食べたと聞いています」。市左衛門から数えて4代目の故・和則さんの妻・喜美代さん(76)は、祖父母らから聞いた話としてそう教えてくれた。スメとは、温泉の蒸気を利用したかまどのこと。集落のあちこちで今も見られる。

共に温泉旅行、エサに卵3個

 そんな土地柄だから、湿気が床下にこもらぬよう、家の床が高く作られている。つまり縁の下が広い。福村家は現在も同じ場所に立ち、改築したものの土台や柱は西郷が滞在した当時のまま。外から見ると、やはり床が高い。「西郷さんは犬たちを縁側につないでいたみたい」(喜美代さん)というのもうなずける。温泉の地熱によって冬でも快適な縁の下で、13匹がくつろぐ姿が目に浮かぶ。

 13匹の食事はどうまかなっ…

この記事は有料記事です。残り6354文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    太田匡彦
    (朝日新聞記者=ペット、動物)
    2022年10月29日7時24分 投稿
    【視点】

     西郷隆盛の犬たちとの付き合い方は、現代の知見に照らしてどうなのだろう――。米国獣医行動学専門医の資格を持つ「どうぶつの総合病院」の獣医師、入交眞巳さんに聞いてみた。  取材していてまず気になったのは犬たちの食べ物だった。西郷は犬と一緒に

    …続きを読む