第10回中国の成長、協力しない選択肢などなかった 向き合うべき等身大の姿

有料記事日中半世紀 わたしの声

聞き手・吉岡桂子
[PR]

 日本政府は、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟することを熱心に後押ししました。WTO加盟は中国経済の飛躍を促したいっぽう、先進国の間には規模に見合った責任を果たしていないとの批判が根強くあります。経済産業省で通商畑を歩み、北京駐在も経験した佐々木伸彦・日本貿易振興機構(ジェトロ)理事長にききました。

 日本の協力は間違いだったのでしょうか。

佐々木伸彦さん

ささき・のぶひこ 1955年生まれ。1979年通商産業省(現経済産業省)に入り、通商畑を歩む。ジェトロ北京事務所長を経て、通商政策局長から経済産業審議官。2019年からジェトロ理事長。

 WTOの加盟交渉をしていた時代、中国が貧しかったことが忘れられています。タイなど東南アジアの新興国や台湾、香港などがアジアで成長をとげるなか、貧しい大国が日本の隣にどーんと存在している。一歩間違えれば国内が混乱して、日本に難民として押し寄せてくるのではないか。

 ビジネスパートナーとも呼べないような、そんな心配をする人もいたくらいです。そうならないように、日本はODA(政府の途上国援助)を供与して豊かになってもらおう、WTOで同じルールを共有できる相手になってもらおうと動いていたのです。

 ――橋本龍太郎首相が1997年9月に訪中した際、通商産業省(現経済産業省)北西アジア課長として同行しています。橋本政権は、中国のWTO加盟を日本の国益と考えていました。

 遼寧省大連の工業団地が埋まらなくて、橋本首相も視察しました。WTOに加盟した2001年の時点でも、経済規模は日本の3分の1に満たず、1人当たりで言えば30分の1以下。日中戦争への贖罪(しょくざい)意識を持つ財界人も少なくなかった。

 ――G7主要7カ国サミットでも、橋本首相は中国のWTO加盟の重要性を訴えていました。

良いわけではなかった日中関係

 訪中の前年にあたる96年の…

この記事は有料記事です。残り2490文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

連載日中半世紀 わたしの声(全40回)

この連載の一覧を見る