米国発ショック、経済界は中国市場に賭けた いま響く大平正芳の警告

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福田直之
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 田中角栄通産相首相秘書官として仕えた小長啓一(91)は、日中国交正常化前、田中が中国市場の可能性をこう評したことを覚えている。

 「人口の多さだよ。それだけ考えておけよ。桁が違うだろう」

 佐藤栄作内閣で田中が通産相を務めた1971年7月~72年7月の話だ。

 小長によると当時、全日本空輸(現ANAホールディングス)元社長の岡崎嘉平太、新日本製鉄(現日本製鉄)社長の稲山嘉寛、東京電力会長の木川田一隆ら著名な財界人が田中の元を訪れ、中国との貿易拡大を見据えた国交正常化を求めていた。

 経済界が中国へ急傾斜した契機は、71年の「ニクソン・ショック」だった。

 一つは米大統領ニクソンが7月15日、冷戦で敵対関係にあった中国へ訪問すると電撃的に発表したことだ(訪問は翌72年2月)。当時、日中貿易は民間主体の「覚書貿易」として行われていた。経済界には、脈々と日本が培ってきた対中貿易に、米国企業が割って入るとの危機感が広がった。小長は「米国がどんどん行くものだから、これに遅れてはいけないという感じが、政界だけでなく経済界にもあった」と振り返る。

 もう一つはニクソンが71年…

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