羽生結弦の「執念」に触れたのは、11月のモスクワだった。
2018年、グランプリ(GP)シリーズ第5戦ロシア杯。フリーを午後に控えた朝のことだ。
公式練習を終えた羽生(当時23)は、いったん会場を後にした。
気温は零下。関係者口から出てくるのを、私を含む数人の報道陣が震えながら待っていた。
ドアから出てきた羽生の表情が硬い。アイシングを施した右足首を、わずかに引きずっていた。
「大丈夫ですか?」
我々の問いに、はっきりした口調で返してくれた。
「大丈夫です」
だが、決して「大丈夫」などではなかった。
前日のショートプログラム(…
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