NATOを変えたロシアの住民虐殺 プーチン政権存続「考えにくい」
長年、「軍事的中立」を保ってきた北欧のフィンランドとスウェーデンが、西側の軍事同盟「北大西洋条約機構(NATO)」に加盟申請しました。欧州の安全保障構造における歴史的転換点とされますが、そもそもNATOとはどんな組織で、どんな役割を担っているのでしょうか。一時は「脳死」と評されるほどバラバラだったNATOは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて強い結束を見せていますが、不安要素はないのでしょうか。欧州の政治・外交史や安全保障に詳しい、防衛大学校の広瀬佳一教授に聞きました。
――NATOとは、そもそもどんな組織ですか。
「西側諸国による軍事同盟です。西欧と北米の12カ国で1949年にスタートしました。52年以降は加盟国を少しずつ増やし、東西冷戦終結後にはかつてソ連の影響下にあった東欧でも加盟国が増えました。2020年に北マケドニアが加わって現在の30カ国体制になっていて、18日に加盟申請をしたフィンランドとスウェーデンが加われば32カ国まで増えます」
「NATO設置の根拠となる北大西洋条約は、加盟国が『民主主義』『個人の自由』『法の支配』を擁護するとうたっています。また、NATOの最大の特徴は条約第5条の集団防衛で、『1または2以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす』と規定しています。NATOのように加盟国間で集団防衛態勢をとる同盟には他に、ロシアを中心に旧ソ連6カ国でつくる集団安全保障条約機構(CSTO)があります」
――NATOはなぜできたのでしょうか。
「きっかけは東西冷戦の激化でした。米国、英国、ソ連を中心にナチス・ドイツなどを打倒した第2次世界大戦の終結から間もない1940年代後半、欧州で自由主義陣営と共産主義陣営の政治的対立が鮮明になりました。西側の占領政策に反発したソ連がベルリンの陸路を封鎖した『ベルリン封鎖』が起きるなど、軍事的対立に発展するのは時間の問題だとみられるなか、米国抜きの西側は戦力面で東側に大きな差をつけられていて、その脅威に対抗するための体制整備に迫られました。そこで、米国にも加わってもらい、大西洋を挟んだ自由主義陣営の同盟を結成することになりました」
「12の原加盟国には3通りの立場がありました。まず、東側の軍事的脅威に直接さらされた国です。英国やフランス、ソ連と国境を接するノルウェーなどです。次に、NATOにとって戦略的に重要な領土を持つ国です。欧州と米国の中間に位置するアイスランドや、グリーンランドを領土に持つデンマークなどが該当します。そもそもアイスランドは軍隊を持っていません。三つ目は第2次大戦における敗戦国のイタリアです。当時イタリアでは共産主義が広がりつつあり、それを抑える目的もあって、NATOの一員として米国が基地を置きました」
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